オミクロン株は自然感染歴のある人にも再感染する
研究者たちが最も懸念しているのは、オミクロン株が既存の免疫を回避する、つまり自然感染によって産生された抗体から逃れることができるという点だ。
「デルタ株と異なり、オミクロン株は以前に新型コロナにかかったことのある人にも再感染しやすいようです」と韓国、ソウルにある国際ワクチン研究所の所長、ジェローム・キム氏は話す。南アでは、オミクロン株による再感染が、これまでの全変異株による再感染の約2.5倍になっているようだ。
「南アでは10月初めから再感染のリスクが著しく高まっており、これはオミクロン株の出現に対応しているようです」と、南ア科学イノベーション省・国立研究財団疫学モデリング・分析研究拠点(DSI-NRF SACEMA)の所長、ジュリエット・プリアム氏は話す。
血液サンプル中の抗体を分析した結果、南アではオミクロン株が発見される前に60~70%の人が新型コロナウイルスに感染していたと推定されている。査読前の医学論文を投稿するサイト「medRxiv」に12月2日付けで公開されたプリアム氏の研究では、250万人の南アフリカ人のPCR検査結果を用いて再感染の有無が調査された。その結果、11月に確認されたオミクロン株の感染者はほぼ全員、2020年3月以降に新型コロナの陽性診断を2回以上受けていたことがわかった。
「オミクロン株がより中和抗体に対する耐性をもつとすれば、これは予想される結果です」と、米ロックフェラー大学のウイルス学者、セオドラ・ハツィオアノウ氏は話す。
現行のワクチンはどれほど有効なのか
香港、米ミネソタ州、ノルウェーでは、ワクチン接種済みの人でもオミクロン株の感染例が報告されている。新型コロナウイルスの動向調査が綿密に実施されているデンマークでは、11月22日〜12月9日の全新規感染者の3%以上がオミクロン株による感染だった。これは、人口の80%以上がワクチン接種を完了していても、オミクロン株による感染が拡大する可能性があることを示唆している。
「実は私も、アフリカ以外で初めて確認されたオミクロン株の感染者の一人でした」。イスラエル、シェバ・メディカル・センターの心臓専門医マオール・エラッド氏は、学会に出席するために英ロンドンを訪れた際、オミクロン株に感染したという。マスクを着用し、米ファイザー製のワクチンを3回接種していたにもかかわらずだ。
「発熱、筋肉痛、喉の痛みなどの症状が48時間続き、さらに2、3日は弱った状態で、倦怠(けんたい)感や体調不良が続きました。しかし、5日後には完全に回復しました」とエラッド氏は言う。ワクチンを接種していても、感染する可能性はある。「ワクチンの効果は100%ではありません」
しかし、現行のワクチンがオミクロン株に対して効果がないかどうかを判断するのは時期尚早だ。
香港大学の潘氏による研究では、オミクロン株に感染した人は感染の5〜6カ月前にファイザー・ビオンテック製のワクチンの接種を完了していた。また、南ア医学研究会議によるツワネからの速報では、12月2日にある病院の新型コロナ病棟に入院していた成人38人のうち、6人がワクチン接種済み、24人が未接種、8人が接種状況不明だった。
南アでは35歳以下の約25%しかワクチンを接種しておらず、ハウテン州では人口の33%しか接種を完了していない。南アでオミクロン株に感染した人に若者が多いが、この状況をワクチン接種の有無で説明できるかどうかはまだ明らかになっていない。
ファイザー社のプレスリリースによると、実験室内における研究では、同社のワクチンを3回接種した人の免疫血清ではオミクロン株が中和されるのに対し、2回接種では効果が著しく低下する可能性があるという。これは、同社のワクチンが、元のウイルスや他の変異株に比べてオミクロン株に対しては比較的効果が低いことを示唆する予備的な別の研究結果とも一致する。
だがファイザー社のデータが正しければ、現行のワクチンの追加接種でも、ある程度の免疫を得られるはずだ。現在、複数のワクチンメーカーが、オミクロン株に特化したワクチンを開発している。(参考記事:「オミクロン株に備え、コロナワクチンの改良が急加速」)
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