英国でオミクロン株の死者、現行のワクチンと治療薬は効くのか

最新の研究結果を解説、再感染のしやすさや重症化などについても

2021.12.14
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2021年12月9日、ロンドン中心部に集まった買い物客。一部の人は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにマスクなどを着用している。(PHOTOGRAPH BY HOLLIE ADAMS, AFP VIA GETTY IMAGES)
2021年12月9日、ロンドン中心部に集まった買い物客。一部の人は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためにマスクなどを着用している。(PHOTOGRAPH BY HOLLIE ADAMS, AFP VIA GETTY IMAGES)
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 英国のボリス・ジョンソン首相は13日、新型コロナウイルスのオミクロン株による死者がはじめて確認されたことを明らかにした。世界保健機関(WHO)が「オミクロン株」と命名してから2週間あまり。デルタ株よりも感染の拡大が速く、これまでの変異株よりも免疫系を回避しやすいことがわかってきたが、より重症化しやすいかどうかは不透明だ。

 オミクロン株は南アフリカで最初に検出された。多くの国が渡航禁止措置をすばやく講じたにもかかわらず、WHOの12月7日付けの報告によればオミクロン株はすでに57カ国に広がり、米国では12月13日までに30州で検出されている。

 南アフリカで継続中の分析によると、同国では過去最も感染しやすい変異株となっている。11月末までの最新データによると、オミクロン株は南アの全症例の70%を占めており、現在では90%以上になっていると推測されている。

 南アで最も人口の多いハウテン州はオミクロン株の感染の中心地となっており、新型コロナの1日あたりの新規感染者数が約3〜4日ごとに倍増している。なかでも首都プレトリアを含むツワネでは、現感染者数が1週間で6697人から2万425人へと3倍に増えた。また、同州では3人に1人の割合で検査結果が陽性となっているが、この陽性率の高さは市中で感染が広がっていることを意味し、実際の感染者数は公式発表よりもさらに多いと考えられている。

 ウイルスの感染拡大が速くなる理由は、感染力が強いか、既存の免疫反応を回避しているかだ。

「オミクロン株に感染した患者の中には、ウイルスを大量に排出している人もいます」と話すのは、南ア以外の地域で最初期にオミクロン株の感染者を検出した香港大学のウイルス学者、潘烈文(レオ・プーン)氏だ。12月3日付けで医学誌「Emerging Infectious Diseases」に発表された氏の研究では、ホテルの廊下を挟んだ部屋に滞在した隔離者の間で感染が起きた事例から、オミクロン株は空気を介して非常に効率的に広がるとみており、「これが感染率を高める原因になっているかもしれません」と話す。

 ただし、「(デルタ株に対する)オミクロン株の優位性は免疫回避にある」との証拠が集まりつつあるとベルギー、ルーベン・カトリック大学の進化生物学者で生物統計学者でもあるトム・ベンセリアーズ氏は話す。

オミクロン株はこれまでの変異株とどう違うのか

 増殖するウイルスは、自分の遺伝物質を複製する際のエラーが原因で、頻繁に変異する。つまり、1日あたり何十万人もの新規感染者が発生する状況では、それだけ変異の機会も多い。

「ウイルスは変異を生みだす機械のようなものです」と、新型コロナウイルスの系統進化の傾向を明らかにしてきた米テンプル大学のウイルス学者セルゲイ・ポンド氏は話す。

 オミクロン株のスパイクたんぱく質にある新たな変異は、特に大きな懸念材料だ。スパイクたんぱく質は、新型コロナウイルスがヒトの細胞に感染する際にきわめて重要な部分であり、抗体の主な標的となる部分でもある。そこに変異が生じると、スパイクの形が変わり、抗体がスパイクを認識して結合することが困難になって、ウイルスが免疫を回避できるようになる。

 オミクロン株は、元のウイルスに比べると50以上の変異があり、そのうち30以上の変異がスパイクたんぱく質に関連している。

「これらの変異をすべて合わせると、理論的には、スパイクたんぱく質の形状が全体的に大きく変化する可能性があります」。新型コロナ治療薬を開発している米Vir バイオテクノロジーの最高科学責任者(CSO)で免疫学者のハーバート・バージン氏はそう語る。

 ポンド氏は、「まだオミクロン株の臨床的な影響を直接測定できていません」と述べる一方、氏の予備的な分析では、抗体の中和作用とスパイクたんぱく質の機能の両方に影響を与える可能性の高い大幅な変化がオミクロン株で確認されている。

次ページ:再感染しやすい? 現行のワクチンは有効?

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