オミクロン株に備え、コロナワクチンの改良が急加速

薄れる楽観的な見方、コロナやインフルの万能ワクチンも視野に

2021.12.14
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 今回のガイダンスでは、過去に1回も新型コロナワクチンを接種していない人から、推奨されるすべてのブースターを接種した人まで、さまざまな接種歴をもつ人を対象に含めることが推奨されている。しかし、子どもや高齢者など、すべての年齢層を含めた治験を義務付けるものではない。

 仮に新型コロナワクチンにおいて対象とすべき株が変更になった場合、FDAはインフルエンザの場合よりもさらに迅速な対応が必要となる。「インフルエンザの場合は新しいワクチンを開発するのに6カ月の猶予がありますが、新型コロナの場合はすぐにでも必要でしょう。しかし、近道をするわけにはいきません」とオスターホルム氏は話す。

 企業がワクチンを改良する際には、現行の製造プロセスに厳密に従わなければならず、それが安全性を保つ鍵なのだとオスターホルム氏は言う。1976年、豚インフルエンザワクチンを接種した数十人が神経疾患のギラン・バレー症候群を発症したが、それ以来、インフルエンザの予防接種で予期せぬ副作用が大量に発生した例はない。氏は1976年の事例について、インフルエンザワクチンの製造方法を変えたことが原因であり、株の変化によるものではないと考えている。

現行ワクチンの有効性は? 検証進む

 米国の科学者たちは、オミクロン株によってワクチンやブースターの改良が必要になるかどうかを判断するために、イスラエルや英国などでの変異株の動向を注視している。両国では国営の医療システムのおかげで、ワクチン接種歴と新型コロナの感染例を素早く結びつけることができるからだ。

「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、これらの国では大規模なデータセットを7~10日で分析しています」とオスターホルム氏は言う。オミクロン株がまん延している南アフリカのデータによって、ワクチンを接種した人の重症化率がデルタ株に比べて高いかどうかも明らかになるだろう。

 また、ワクチンを接種した人の血液を用いた試験で、抗体がオミクロン株に対してどの程度効果的なのかも調べられている。ファイザー社は予備的な実験結果について、同社のワクチンを3回接種すればオミクロン株に対して有効であることが示されたと発表している。

 しかし、こうした「ウイルス中和試験」の有用性は限られているとオスターホルム氏はくぎを刺す。「中和率が大幅に低下していることを示すことはできますが、それを治療の現場に反映させる必要があります」

 改良前のワクチンについては、たとえオミクロン株に対する効果が他の変異株に比べて低かったとしても、十分な保護効果を発揮する可能性はある。ワクチンは、抗体を産生するB細胞だけでなく、T細胞も刺激するからだ。問題は、T細胞はすぐには動員されないという点だ。「この細胞性免疫反応には時間がかかるため、それが活発化する前にいわゆるブレイクスルー感染する人が増える可能性があります」とクーパー氏は話す。

 それでも、推奨されている追加接種を含め、現在利用可能なワクチンのいずれかを受けることは「今ある最良の手段」であり、誰もがそうすべきだとウェザーヘッド氏は言う。

 最終的には、あらゆる変異株に有効な「ユニバーサル(万能)ワクチン」が開発されるかもしれない。考え方としては、進化によって変化する可能性のある新型コロナウイルスの重要な特徴のうち、1つだけではなく複数をターゲットにするということだとクーパー氏は説明する。

 この技術は、以前なら絵空事のように思えたかもしれない。しかし、mRNA技術が成功したうえ、今回のパンデミックでウイルスと宿主の相互作用に関する科学的知見が得られたことで、「コロナやインフルエンザなどの主要なウイルスに対して万能ワクチンを開発しようという機運が強まり、数年以内に治験が開始される可能性が出てきました」とクーパー氏は語る。

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文=MERYL DAVIDS LANDAU/訳=桜木敬子

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