2. オーストラリア最大の恐竜
オーストラリア南西部クイーンズランド州の奥地にエロマンガという小さな町がある。マッケンジー家は代々、この近くで羊と牛の牧場を営んできた。2004年、当時10代のサンディー・マッケンジーさんが、かつてこの場所に巨大生物が生息していたことを示す痕跡を発見した。
2006年以降、マッケンジー家の人々とクイーンズランド博物館の古生物学者スコット・ホックヌル氏が率いる研究チームは、定期的に牧場で化石を発掘し、ついにオーストラリア最大の恐竜を発見した。
近くの小川にちなんで「クーパー」と呼ばれるこの恐竜の化石は、骨の表面の3Dスキャンなど、10年以上にわたって科学的に調査され、6月7日付けで学術誌「PeerJ」に発表された。約9500万年前に生きていた新種の恐竜であることが確認され、学名は「アウストラロティタン・クーペレンシス(Australotitan cooperensis)」とされた。
アウストラロティタンは、長い首をもつ竜脚類のティタノサウルス類に属している。ティタノサウルス類には、陸上を歩いた史上最大の動物と言われるアルゼンチンの巨大恐竜パタゴティタンなどが含まれる。アウストラロティタンの上肢骨の長さは1.9メートル以上、体重は26~82トンだったと推定されている。
化石は現在、マッケンジー家が新しく設立したエロマンガ自然史博物館に保管されている。
3. コンマ型のトサカをもつメキシコの恐竜
2005年、メキシコ南部のコアウイラ州で、約7200万年前の恐竜のほぼ完全な尾の化石が見つかった。2013年にメキシコの古生物学者チームが現地で発掘を進めたところ、頭蓋骨などの部位が見つかり、5月11日付けで学術誌「Cretaceous Research」に論文が発表された。
「トラトロフス・ガロルム(Tlatolophus galorum)」と名付けられたこの恐竜は、ランべオサウルスと呼ばれる植物食恐竜の仲間だ。学名は、そのよく目立つトサカの形が「トラトリ(tlahtolli)」(アステカ美術に見られる句点のコンマのような絵文字で、ナワトル語で「言葉」を意味する)に似ていることから付けられた。
トラトロフスは、鼻先から尾の先までの長さが約8メートル、腰の高さが約2メートルあったと推定されている。保存状態の良い頭蓋骨から、この恐竜は映画『ジュラシック・パーク』の冒頭で湖の水を飲んでいる姿が印象的な、トサカをもつ鳥脚類パラサウロロフスに近い仲間ではないかと考えられている。
独特な形のトサカは、その鳴き声に影響を及ぼしていたと考えられ、恐竜の社会生活に大きな役割を果たしていた可能性がある。
4-5. 英国ワイト島の「地獄のサギ」と「川岸のハンター」
現在、英国南部ワイト島の南西部の海岸には、砂岩の崖に囲まれた美しい風景が広がっている。しかし今から1億2500万年以上前は、川が流れ、氾濫原が広がるサバンナのような谷間で、ワニのような平べったい頭蓋骨をもつ2種の巨大な恐竜が生息するのに適した場所だった。
この島で見つかった化石がスピノサウルス科の2つの新種であることが、9月29日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表された。スピノサウルス科は謎に包まれた大型肉食恐竜で、「泳ぐ恐竜」の代表格であるスピノサウルスも含まれている。
おすすめ関連書籍
おすすめ関連書籍
先史時代の生物から恐竜、ヒトの祖先まで約300種の生態を網羅する、古生物大百科。700点を超えるビジュアルを収録。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕
定価:5,280円(税込)