致死的な「ヘビ真菌症」、北米で感染拡大、日本にも侵入

「車にひかれたのかのように」顔が変形、ヘビの行動に変化も

2021.12.11
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【動画】ガラガラヘビを死に至らしめる謎の真菌
病状の映像は35秒前後~。(解説は英語です)

最初の深刻なケース

 初めて深刻な兆候が見つかったのは、2006年のことだ。米国ニューハンプシャー州の魚類狩猟局の専門家が、州のヨコシマガラガラヘビ(Crotalus horridus)のなかに、顔や首に茶色い水ぶくれができている個体が何匹かいることに気付いた。

 初めの頃はそれほど深刻な様子は見られなかったが、しばらくするとそのうちの1匹が死んだ。口の中を見ると、「重度の真菌感染症」に侵されていた。州の非狩猟・絶滅危惧野生生物プログラムの責任者で野生生物学者のマイケル・マーチャンド氏は、この一件を、2011年に学術誌「Biological Conservation」に報告している。

 この集団感染は後にヘビ真菌症と関連付けられ、最終的に40匹いた同州のヨコシマガラガラヘビは、半分の19匹にまで減少した。

 幸い全滅は免れ、今では約50匹にまで回復した。回復した理由は不明だが、マーチャンド氏は、生存したヘビが菌に対する免疫力を高め、それが次世代に受け継がれた可能性があるという。

毒をもつヘビのほうが重症に

 ヘビは真菌症に対して免疫力を高められるものなのかという疑問も含め、ローチ氏やアレンダー氏は、10年にわたってヘビ真菌症に関するあらゆる謎の解明に取り組んできた。

 例えば、研究チームはこれまでに、ヘビ真菌症が全身性の病気であり、最初に皮膚に症状が現れ、後に体内に病変が広がる場合があることを明らかにした。しかし、その病変がヘビを死なせるわけではない。アレンダー氏は、ヘビの免疫系が過剰に反応して死に至るのではないかと考えている。

 また、接触感染で広がることも確認されている。つまり、複数が固まって巣穴で過ごしたり、冬眠する習性のある種が感染しやすいということだ。求愛行動や交尾も感染の原因となり、母から子へ感染することもあると、ローチ氏は話す。

 さらにアレンダー氏によると、菌は様々な土壌条件や生息地で繁殖できるようだという。

「生育条件は、白鼻症候群の病原体よりも幅広いです」。北米では、白鼻症候群によって600万匹以上のコウモリが死んでいる。

 ヘビ真菌症は、さまざまな種のヘビから見つかっているが、種によって受ける影響に違いがあるようだ。たとえばアレンダー氏によると、キタミズベヘビ(Nerodia sipedon)の感染率は、80%を記録した群れもあったが、致死率は比較的低い。一方ガラガラヘビやその他の毒を持つヘビは、感染率も死亡率も高い。

 さらに、米北東部と中西部原産のマサソーガは、感染した場合の致死率が、ある時点で90%を超えたことがあった。2021年現在、ヘビ真菌症によってマサソーガの数が大きく減少したということはなかったものの、「健全な状態ではありません」と、アレンダー氏は言う。

次ページ:じわじわと広がる感染症

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