世界で最も絶滅に近いオオカミ、復活計画が進行中

野生個体は1980年に絶滅宣言、飼育個体が野生へ、アメリカアカオオカミ

2021.12.09
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米国テネシー州のリフレクション・ライディング植物園&自然センターで、遠吠えをするアメリカアカオオカミの「アポロ」。アポロはおそらく自然に放たれることはないが、2021年に生まれたアポロの子は放獣の候補になるかもしれない。(Photograph by JESSICA A. SUAREZ)
米国テネシー州のリフレクション・ライディング植物園&自然センターで、遠吠えをするアメリカアカオオカミの「アポロ」。アポロはおそらく自然に放たれることはないが、2021年に生まれたアポロの子は放獣の候補になるかもしれない。(Photograph by JESSICA A. SUAREZ)
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 世界で最も絶滅に近いオオカミが、米国にいる。アメリカアカオオカミ(Canis rufus)だ。

 野生におけるその数はわずか20頭弱。ノースカロライナ州東部のアリゲーターリバー国立野生生物保護区およびポコシン湖国立野生生物保護区周辺のごく狭いエリアに生息している。

 アメリカアカオオカミはかつて、テキサス州から米国東海岸にかけて生息していたが、狩猟によってその範囲が徐々に狭められ、1980年には野生下での絶滅が宣言された。1987年、8頭の飼育個体をノースカロライナの野生に放つという画期的な実験が行われ、やがて100頭以上の個体群を形成するにいたった。にもかかわらず、密猟と、米国魚類野生生物局による管理方法の変更によって、その数は再び激減することとなった。(参考記事:「動物大図鑑:オオカミ」

 2021年の春、保護活動家にとってささやかな朗報があった。飼育下で生まれた子4頭をオオカミの巣穴に入れたところ、野生のオオカミがこれを受け入れてくれたのだ。さらには、別の成体4頭も野生に戻された。子オオカミたちは今も元気で暮らしているようだが、成体の方はそううまくはいかなかった。数カ月後には3頭が車にひかれて死に、4番目の個体は私有地で射殺された。

 個体数を増やしたい魚類野生生物局は11月、新たに9頭の成体を放す計画を発表した。同局はまた、ノースカロライナ州におけるアメリカアカオオカミの保護地域を90%縮小するという2018年の提案を撤回することも先日発表している。絶滅危惧種法に違反しているとの訴訟を受けての措置だ。(参考記事:「オオカミを「絶滅危惧種」から除外、訴訟急増か、米国」

 保護団体「ワイルドランズネットワーク」のロン・サザーランド氏は、政府がこの誤った提案を放棄したことは極めて重要だと述べている。それでも「現在の状況は、2018年よりもさらに緊急性を増しています。この種を救い、危機から立ち直らせるために、米国の動物保護コミュニティーは緊急に対応を開始すべきです」と氏は言う。

「われわれは、人とアメリカアカオオカミのより有益な共存を促すための方法を見つけるために、関係者と引き続き協力していきます」。魚類野生生物局のアメリカアカオオカミ回復計画を主導するエミリー・ウェラー氏はそう述べている。

野生のオオカミ

 現在、ノースカロライナ州に生息する小規模な野生個体群のほかに、約240頭が米国内の動物園や自然センターの人工飼育下で暮らしている。これらの施設では、個体数の回復と遺伝的多様性の維持を目的とした繁殖が行われている。アメリカアカオオカミの「種の保存計画(SSP)」の一環だ。

 ノースカロライナ動物園の動物管理主任で、アメリカアカオオカミSSPのコーディネーターであるクリス・ラッシャー氏によると、研究者らは、絶滅を防ぐための重要な一歩として、飼育下の個体数を合計400頭にまで増やしたいとしているという。

次ページ:自然に放すことの難しさ

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