カナダ東部のニューブランズウィック州、ネピシグイット滝の近くに、カメのような形をした岩がある。北米先住民のミクマク族には、この岩「エゴモカセグ」にまつわる伝説がある。「カメが完全に川から出たときが、ミクマク族にとっての世界の終わりなのです」
川の水位が下がると、この岩が川から上がってくるように見えるのだと、トレイルに精通しているジェイソン・グラント氏は話す。同氏の義理の父親がミクマク族の長老として、この伝説を語り継いでいた。グラント氏は毎年この岩を訪れているが、「カメ」が地面に上がってくるのはまだまだ先のことになりそうだという。
ネピシグイット滝は、大昔から使われてきたカナダの先住民の移動ルート上にある。これを整備した道が、カナダ沿海州で一番長いバックカントリーのハイキングコースになっている。「サンティエ・ネピシグイット・ミクマク・トレイル」は、ネピシグイット川に沿って約150キロにわたって続く起伏の多い道で、もともとは遊牧を行っていたミクマク族の移動路だった。
この道は、ニューブランズウィック州バサーストの海辺にあるデイリー・ポイント自然保護区から始まり、同州のマウント・カールトン州立公園内のバサースト湖まで続く。この州立公園内にそびえる標高約820メートルのカールトン山は、カナダ沿海州の最高峰だ。
2018年に完了したこの道の修復作業では、ミクマク族とこの道とのつながりを感じてもらえるように、ティピーと呼ばれる先住民のテントに泊まれるキャンプサイトや、エゴモカセグをモチーフとしたカメのロゴなどが作られ、ミクマク族の言語や文化に触れられるようになった。
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