知る人ぞ知るイタリア山岳鉄道の旅、路線復活で一躍大人気

美しい自然と古き良きイタリアの姿、「小さなシベリア鉄道」の愛称も

2021.12.07
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イタリアの「シベリア鉄道」に乗って、アブルッツォ州の美しい景色を楽しむ女性。歴史あるスルモーナ=カルピノーネ線の復活は、イタリアの鉄道旅行人気に再び火をつけた。(Photograph by Chiara Negrello)
イタリアの「シベリア鉄道」に乗って、アブルッツォ州の美しい景色を楽しむ女性。歴史あるスルモーナ=カルピノーネ線の復活は、イタリアの鉄道旅行人気に再び火をつけた。(Photograph by Chiara Negrello)

 イタリア、アブルッツォ州の山岳地帯を走るスルモーナ=カルピノーネ線は、1897年の開業当時は工学上の傑作ともてはやされた鉄道だ。全長は120km弱で、現在でもイタリアで2番目に海抜の高いところを走り、道路のない地域を横断している。

 この歴史的な路線は、2010年にいちど廃止されている。自動車の普及が進み、田舎から都会への移住が進んだからだ。鉄道に代わってバスの運行が始まったが、バスの運行本数が少ない上、冬の山間部では運行自体が難しく、利便性の高い都市部への移住者を増やしただけだった。

車窓から見えるカステル・ディ・サングロの町。町の中心部のまわりには牧草地や畑が広がっている。(Photograph by Chiara Negrello)
車窓から見えるカステル・ディ・サングロの町。町の中心部のまわりには牧草地や畑が広がっている。(Photograph by Chiara Negrello)

 鉄道が廃止されると、交通の便が悪くなるだけではない。スルモーナ=カルピノーネ線のような鉄道は、19世紀に統一されたばかりのイタリアの国土を1つにまとめるのに役立ってきたが、鉄道の廃止によって、こうした過去との重要なつながりが失われてしまうのだ。

 しかし今、鉄道は息を吹き返した。フィレンツェのアパートの近くを通る鉄道のリズムに惚れ込んだ私(フォトジャーナリストのキアラ・ネグレロ氏)は、この山旅を体験してみようと思い立ち、カメラを持って車で5時間かけてスルモーナまで行き、スルモーナ=カルピノーネ線の始発駅から終着駅までの全線を旅した。

 旅の途中、私はイタリアの中でも見落とされがちな地域の人々の暮らしを写真におさめた。そこではすべてがゆっくりとしたペースで進んでいて、旅行者は時の流れを遡ることができる。

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高山鉄道の旅

 鉄道の旅は、ローマから車で東に2時間ほどのところにあるスルモーナから始まった。

 沿線のほかの町と同様、スルモーナでは、古い石造りの建物や、季節の食材を売る賑やかな屋外市場、陽気な音楽家など、古き良きイタリアの姿を垣間見ることができる。

 午前8時30分、熱心なボランティアたちが旅行者を駅で出迎え、列車が歓迎の汽笛を鳴らす。往路では5つの主要都市に停車して、ナポリの北に位置するイゼルニア県のカルピノーネを目指す。往復計12時間の長旅だ。

 車内では、手すりの装飾、ガラスランプ、年代物の非常停止用引き手やヒーター、壁に飾られたイタリアの名画の複製など、細部にまで豊かな歴史が感じられる。木製のシートは教会の信徒席のようで、コンパートメントにはベルベットがあしらわられている。

スルモーナ=カルピノーネ線の沿線の通りに集まる女性たち。(Photograph by Chiara Negrello)
スルモーナ=カルピノーネ線の沿線の通りに集まる女性たち。(Photograph by Chiara Negrello)
パレーナの町で、音楽家の演奏を楽しむ乗客たち。(Photograph by Chiara Negrello)
パレーナの町で、音楽家の演奏を楽しむ乗客たち。(Photograph by Chiara Negrello)
リビゾンドリ・ペスココスタンツォ駅は、イタリアで2番目に高い海抜1268mの高地にある。(Photograph by Chiara Negrello)
リビゾンドリ・ペスココスタンツォ駅は、イタリアで2番目に高い海抜1268mの高地にある。(Photograph by Chiara Negrello)

 車窓から見える風景は、羊が放牧されているのどかな牧草地から、古代ローマ時代の水道橋が立ち並ぶ高山へと変わっていった。(参照記事: 「ギャラリー:鉄道で行く世界の絶景 写真16点」

 線路上にいる動物や、線路のすぐ近くを走る動物を見つけるたびに列車は停まり、私はこの土地の自然の豊かさを実感することができた。この地域には、マルシカヒグマをはじめとする珍しい動物が生息しており、山には他にも、オオカミ、ヤマネコ、テン、ベニハシガラスなども生息している。(参考記事:「【動画】ある森の木と動物たちの365日」

 列車が駅に入ると町の人々が手を振ってくれ、地元の音楽家が奏でるファンファーレに合わせ、カップルが道で踊った。こうした町での生活は、大勢の人で賑わう海辺の生活とは対照的だ。

次ページ:イタリアの歴史を語る鉄道

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