急拡大のオミクロン株、現状の要点は? 詳しく解説

新型コロナの新たな「懸念される変異株」、少ないデータを読み解く

2021.12.01
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「今回のオミクロン株の場合、多くの変異があることはわかっていますが、その全体的な影響はまだ不明です」と、東京大学のウイルス学者、佐藤佳氏は注意を促す。これまでにオミクロン株に感染したと診断された人は1000人ほどに過ぎず、また、南アフリカから得られたサンプルや遺伝子配列はごくわずかであるため、オミクロン株が人から人にどの程度感染しやすいのかや、より重篤な症状を引き起こすかどうかについて、専門家が明確な結論を出すことは難しい。

 明るい情報としては、最初に自然感染した後でワクチン接種をした人から採取した抗体を調べたところ、合成したオミクロン型のウイルスを中和できたというものがある。この事実は、mRNAワクチンのブースター接種によって、オミクロン株を強く防げる可能性を示唆している。

 オミクロン株については「懸念すべきではありますが、パニックになる必要はありません」。11月29日朝の記者会見で、ジョー・バイデン米大統領はそう述べた。「この新規変異株や、その他のあらゆる変異株に対する最善の防御策は、わたしたちがこれまで行ってきたものと同じく、ワクチンを規定通りに接種し、追加のブースター接種も受けることです」

 これまでのところ、「ワクチンが重症化や合併症を防ぐのに今も有効であることを示すさまざまな兆候が見つかっています」と、南アフリカ、ウィットウォーターズランド大学の感染症専門家イアン・サンネ氏は言う。「このデータはしかし、まだ初期のものであり、数も多くありません」

重症化リスクの判定には時期尚早

 オミクロン株のスパイクタンパク質に生じた32の変異は、その機能をどのように変化させるかによって3つのグループに分類できると語るのは、仏パスツール研究所のウイルス学者・免疫学者であるオリビエ・シュワルツ氏だ。

 一部の変異は、スパイクタンパク質がヒトの細胞と結合する能力を高め、別の変異は、ウイルスが細胞と融合して中に侵入するのを助ける。さらには、スパイクタンパク質の外観を変えて認識しづらくすることで、抗体を回避しやすくする変異もある。

 実験室のレベルでは、スパイクタンパク質の69番と70番目のアミノ酸が欠失するオミクロン株の変異は、感染力を元のウイルスの2倍に上げることをグプタ氏らは2月5日付けの学術誌「Nature」にすでに発表している。また、796番目の位置にあるアミノ酸の変異が、免疫反応を回避するアルファ株の能力に関連していることも同じ研究で明らかにした。

 この事実が示唆しているのは、オミクロン株にあるこれら3つの変異が、ワクチンや過去の感染によって得られた既存の免疫を回避するのを助けるという可能性だ。そしていくつかの予備的な証拠は、実際にそれが起こっていることを示している。

「これまでに多くのブレイクスルー感染が起こっていますが、症状は軽いものです」。南ア政府に新型コロナワクチンについての助言を行っているウイルス学者のバリー・シャウブ氏はそう語る。しかし専門家らは、感染から入院までにはタイムラグがあるため、オミクロン株がより深刻な症状を引き起こすかどうかを判断するのは時期尚早だと述べている。

 ほかにも、スパイクタンパク質の655、679、681番目の変異は、ウイルスをヒト細胞に感染しやすくすると考えられている。これらの変異はミュー株にも存在し、ウイルスをより広まりやすくすることが知られている。

 681番目の変異についてはさらに、11月10日付けで「bioRxiv」に投稿された査読前の論文で、アルファ株のより速い複製と免疫への抵抗を助けている可能性が示唆された。また、アルファ株、ベータ株、ガンマ株にもある501番の変異は、スパイクタンパク質を細胞により強く結合させ、ウイルスの細胞への感染効率を高めることが知られている。

「このウイルスは、非常に高いレベルの免疫を持つと思われる人々の間に、かなり急速に広まっています」と、南アフリカのダーバンにあるクワズール・ナタール大学の感染症専門家リチャード・レッセルズ氏は言う。「だからこそ心配なのです。オミクロン株はこれまでの変異株よりも高い免疫回避能力を持っている可能性があります」

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