ロンドンを気に入った外来インコ、推定3万羽が定着

「世界で最も大胆な生態系の変化のひとつ」、すでに街の風景の一部

2021.12.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
英ロンドンのケンジントン公園。訪れた人々がホンセイインコに餌を与える。中央アフリカや南アジアが原産だが、英国で着実に個体数を増やしている。(PHOTOGRAPH BY RICHARD BAKER / IN PICTURES VIA GETTY IMAGES)
英ロンドンのケンジントン公園。訪れた人々がホンセイインコに餌を与える。中央アフリカや南アジアが原産だが、英国で着実に個体数を増やしている。(PHOTOGRAPH BY RICHARD BAKER / IN PICTURES VIA GETTY IMAGES)
[画像のクリックで拡大表示]

 10月下旬の穏やかな日、私は英ロンドン中心部のケンジントン・ガーデンズにいた。20人ほどの人が、騒がしいインコの群れに餌を与えている。真っ赤なくちばしにエメラルドグリーンの羽をもつエキゾチックな鳥たちは、注目を浴びることにも慣れっこだ。リンゴの芯や木の実を喜んで差し出す大人や子どもたちの手に、臆することなく舞い降りる。なかには頭の上に乗るものもいる。

 ロンドンには推定3万羽のホンセイインコが暮らしており、ケンジントン・ガーデンズは数ある生息地のひとつだ。しかし、彼らは本来ここにいるべき生物ではない。原産地は南アジアおよび中央アフリカだ。ヒマラヤの麓や赤道直下に生きる鳥が、なぜロンドンにいるのだろうか。(参考記事:「「渡り」をやめて都会に暮らすカナダグースたち、なぜ?」

「世界で最も大胆な生態系の変化のひとつ」

 かつて長らく世界帝国の拠点であったロンドンには、ありとあらゆる製品や生物が集まった。インコもそのひとつだ。最も古い目撃記録は1893年にさかのぼる。場所はロンドン南部のダリッジだった。しかし、インコが目立つようになったのは1950年代に入ってからのことだ。

「長年にわたってペットや飼鳥園の鳥が大量に放たれてきたのではないかと思います」と英王立鳥類保護協会(RSPB)スコットランド支部のポール・ウォルトン氏は言う。意図的に放鳥されたか、逃げ出したかのどちらかだ。「ごく小さな繁殖個体群が人に知られることなく何年も暮らしている、ということはよくあります」(参考記事:「インコとオウム、その人気がはらむ危機と問題」

 1980年代までには、かなりの規模の個体群が、市の南西部に位置するキングストン・アポン・テムズ王室特別区に定着していた。それ以来、インコは緑色の波のようにロンドン中に広がった。『The Parakeeting of London: An Adventure in Gonzo Ornithology(ロンドンのインコを追え:野次馬鳥類学の冒険)』の著者であるニック・ハント氏は、これを「世界で最も大胆な生態系の変化のひとつ」と呼んでいる。

 なぜインコはこれほど成功しているのか。その理由のひとつは、ロンドンが鳥にとって完璧な都市だということだ。面積の47%が緑地であり、3000カ所の公園、300万カ所の個人庭園、膨大な数の市民菜園、ビクトリア朝時代の広大な墓地などがある。イングランドの冬は温暖であるうえ、さらに暖かくなりつつあることも、インコたちには好都合だ。

 英国内の他の地域でも、インコは定着しつつある。「ここ3、4年の間に、(スコットランドの)グラスゴーでも繁殖を始めました」とウォルトン氏は言う。「明らかに、彼らはこの国の冬に対応できるのです。しかし、分布は依然として都市部に集中しています」

 オランダ、ベルギー、ドイツ、スペインなど、ヨーロッパの他の地域でも、ホンセイインコとオキナインコが姿を現している。現在、欧州連合(EU)にはインコの個体群が200個ほどあり、その数は増え続けている。(参考記事:「25種の外来オウムが米国で野生化、実は朗報?」

参考ギャラリー:インコとオウムを愛し、保護に人生を捧げる人々 写真12点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:インコとオウムを愛し、保護に人生を捧げる人々 写真12点(画像クリックでギャラリーへ)
インコとオウムに魅せられ、引き取り手のない彼らの保護活動をしている人々を、一人の写真家が追った。(写真=MIISHA NASH)

次ページ:大好きか、大嫌いか

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の
会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 鳥の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

色も姿も多様な鳥たちの写真約350枚、280種以上を収録。世界各地の珍しい鳥、美しい鳥、変わった鳥など、まだまだ知られていない鳥を紹介します。

価格:2,860円(税込)

おすすめ関連書籍

2018年8月号

乱される現代人の睡眠/毒殺される野生動物/チョウを捕まえる人々/インコとオウムの苦境/イエメンの医療危機

明るすぎる照明と眠りの関係、そして快眠とは?特集「乱される現代人の睡眠」で解説します。このほか「チョウを捕まえる人々」、「インコとオウムの苦境」など8月号も充実の特集が勢ぞろい!

定価:1,131円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加