バルバドスがエリザベス女王の君主制を廃止、英連邦の歴史

英連邦王国ではなくなるが、英連邦には加盟し続ける、どういうこと?

2021.11.28
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 その他の多くの国々が、20世紀の半ばから後半にかけて、英国から独立後に英連邦に加盟し、大半がインドにならって、英国君主に忠誠を誓わないことを選択している。

 しかし、今でも女王を君主として受け入れている加盟国もある。こうした加盟国は英連邦王国(コモンウェルス・レルム)と呼ばれており、アンティグアバーブーダ、オーストラリア、バハマ、ベリーズ、カナダ、グレナダ、ジャマイカ、ニュージーランド、パプアニューギニア、セントクリストファーネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、ソロモン諸島、ツバル、英国、そしてまもなく離脱するバルバドスである。

(Rosemary Wardley, NGM Staff. Source: The Commonwealth)
(Rosemary Wardley, NGM Staff. Source: The Commonwealth)

英連邦における英国君主の役割

 英国君主は、自動的に英連邦の長に就くわけではない。エリザベス女王はジョージ国王から地位を継承したが、長の地位は世襲制ではなく、加盟国が選出する。2018年、英連邦は、エリザベス女王に続く長はチャールズ皇太子となることを発表したが、今後も、それが続くとは限らない。

 いずれにしても、英連邦の長の役割は象徴的なものだ。日常業務を監督するのは事務局であり、エリザベス女王の主な役割は、定期的にロイヤルツアーに出かけ、加盟国間の結束を強化することにある。

 一方、英連邦王国(コモンウェルス・レルム)では、君主の役割はやや異なっている。これらの国々は英国君主への忠誠を誓っているものの、英国の一部ではなく、選挙で選ばれた自国の政府がある。女王の代理を務めるのは総督で、法律の承認や大臣、大使、裁判官の任命など儀式的な仕事を行っている。

 こうした役割はほぼ形式的なものだが、異例の状況下では、総督が政府をしのぐ権限を持つ場合がある。たとえば1975年、オーストラリアのジョン・カー総督が、当時のゴフ・ホイットラム首相を罷免した事件だ。これは、議会の行き詰まりを打開するためだったが、憲法を揺るがす問題となった。

1984年9月、ロイヤルツアーでカナダを訪問したエリザベス女王。英連邦王国であるカナダは、女王を国家君主として認めている。しかし、最近の調査では、カナダ国民の半数が、変革の潮時だと考えていることが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY JOHN SHELLEY COLLECTION, AVALON/GETTY IMAGES)
1984年9月、ロイヤルツアーでカナダを訪問したエリザベス女王。英連邦王国であるカナダは、女王を国家君主として認めている。しかし、最近の調査では、カナダ国民の半数が、変革の潮時だと考えていることが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY JOHN SHELLEY COLLECTION, AVALON/GETTY IMAGES)

現代の関係性

 近年、一部の英連邦王国では、変革が始まっている。特に、カリブ海や太平洋の旧植民地では、若い世代が従来の体制を植民地時代の遺物と見なしている。

 今回のバルバドスの決断を、共和主義志向の新たな流れと推測する見解もある。英キングス・カレッジ・ロンドンの帝国史学の教授、リチャード・ドレイトン氏は、2020年にニューヨーク・タイムズ紙で、「女王を国家君主から外すというバルバドスの決定は、ジャマイカやセントルシア、セントビンセント・グレナディーンなどにとって、大きな転換点となるかもしれない」と語っている。

 一方、旧自治領だった国々も、英国王室との関係の変更を検討してきた。オーストラリアでは、1999年に行われた国民投票で、45%が、エリザベス女王を君主から外すことに賛成した。カナダでは、2021年2月の調査で、国民の55%が、英国王室はもう自分の生活とは関係がないと考え、半数は、女王を国家君主から外すべきだと回答した。

 ただし、変化を模索する中でも、各国首脳はバルバドスのバロー初代首相やインドのネルー首相の考えに同意している。つまり、ますますグローバル化が進む世界では、たとえ相手が以前の植民地開拓国であったとしても、英連邦のような組織を通じて、同盟を維持することが重要だという見解だ。

「今後も英国君主との結びつきを維持したいと考えています」。10月、バルバドスのモトリー首相は、バルバドス議会でこのように述べ、君主制の廃止に至った考えについて次のように表現した。

「国民の将来を描き、あらゆる脅威から国民を守る権利は、不可侵の権利です。この権利を、私たちは国民を代表して、ここに要求します。いかなる困難にも負けず、可能性を認識し、結束の必要性を自覚し、12月1日から、世界で最新の共和国としてバルバドスが前進することを、揺らぐことのない確信をもって表明します」

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文=AMY MCKEEVER/訳=稲永浩子

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