NASAの地球防衛実験、小天体に体当たりする探査機を打ち上げ

地球にぶつかる小惑星の軌道を変えることは可能か? 壮大な実験

2021.11.25
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 DARTにとっての一番の難題は、時速2万4000キロの猛スピードで移動しながら、ディモルフォスという的に正確にぶつかることだ。「ディモルフォスがどんな形をしているのかは全くわかっていません」と、APLでDART計画のシステムエンジニアを務めるエレナ・アダムス氏は言う。「犬の骨のような形かもしれませんし、ドーナツのような形かもしれません」

 的を外さないように、DARTのエンジニアはスマートナビと呼ばれる誘導システムを開発した。これはDARTに搭載された望遠鏡を使って、DARTが自律的に衝突地点を狙うことができるようにするものだ。

 DARTは、衝突の4時間前になるまでディディモスの姿を見ることはできない。ディモルフォスに至っては、衝突のわずか1時間前にならなければ視野に入ってこない。DARTが最後の軌道修正を済ませ、衝突まであと2分、距離にして800キロまで近づいてようやく、ディモルフォスはDARTの視界内において直径41ピクセルの塊として見えるようになる。

 衝突するまで、DARTは速ければ2.5秒に1回のペースでディモルフォスの画像を撮影し、地球へ送ることになっている。この最後の画像がとらえるディモルフォスの地形は、DARTの衝突が与える影響を理解するうえで役に立つ。発生する噴出物の量は、DARTがどこに衝突するかによって変わってくるためだ。

「衝突地点の状態によって大きく変わります。岩にぶつかるのか、砂地にぶつかるのか」と、ローレンス・リバモア国立研究所の科学者で小惑星衝突回避シミュレーションを研究するメガン・ブロック・シアル氏は言う。

 DARTがどの程度ディモルフォスを動かすことができるかはわからないが、DARTの建造者たちは十分な衝撃を与えられるだろうと自信を見せる。NASAにとって、DART計画を成功とみなすには、ディモルフォスの公転時間が少なくとも73秒短くなる必要がある。DARTチームは、最大10分まで短縮できるだろうと予測している。

衝突後の計画

 DARTは、最後の瞬間をひとりぼっちで迎えるわけではない。衝突の約10日前に、DARTに搭載されている小型人工衛星「LICIAキューブ」が、本体から切り離される。イタリア宇宙機関が建造・運用するLICIAキューブは、DARTの衝突から165秒後にディモルフォスの近くを通過して、その表面に新たに生じた衝突の傷跡と、衝突によって発生する塵を撮影する。また、衝突時の閃光をとらえることもできるかもしれない。

「リアルタイムで、その瞬間が見られるかもしれません」と、イタリア宇宙機関でLICIAキューブのプロジェクトマネジャーを務めるシモーネ・ピロッタ氏は語る。

 LICIAキューブがとらえる画像は、DART計画にとって極めて重要な資料となる。科学者たちは、DARTの運動量がどれくらいディモルフォスに伝わったかを正確に知るために、衝突によって発生した噴出物の様子を観察する必要がある。

「大量の物質を噴出させるはずです。私たちはその量と、それがどれくらいの速さで移動し、どこへ向かうのかを知る必要があります」と、APLのDART探査チーム担当責任者のアンディ・チェン氏は、11月4日の記者会見で語っていた。

 LICIAキューブは、数週間にわたって地球にデータを送信するが、その後は任務を終えて太陽系内を漂い続ける。しかし、ディモルフォスの観測はそれで終わりではない。2024年には、欧州宇宙機関が別の探査機を打ち上げ、ディモルフォスの調査をさらに詳しく実施することになっている。

参考ギャラリー:小惑星、彗星 地球にぶつかったら大変な天体12点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:小惑星、彗星 地球にぶつかったら大変な天体12点(画像クリックでギャラリーへ)
6600万年前、小惑星が地球に衝突し、鳥をのぞく恐竜たちほか数多くの生命を絶滅させた。人類の歴史で同様のことが起こるかはわからないが、太陽系では日々、様々な天体が飛び交っている。ここで、地球に衝突してほしくない太陽系の天体を写真で紹介したい。(PHOTOGRAPH COURTESY T. RECTOR (UNIVERSITY OF ALASKA ANCHORAGE), Z. LEVAY AND L. FRATTARE (SPACE TELESCOPE SCIENCE INSTITUTE), AND NATIONAL OPTICAL ASTRONOMY OBSERVATORY/ASSOCIATION OF UNIVERSITIES FOR RESEARCH IN ASTRONOMY/NATIONAL SCIENCE FOUNDATION)

文=MICHAEL GRESHKO/訳=ルーバー荒井ハンナ

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