NASAの地球防衛実験、小天体に体当たりする探査機を打ち上げ

地球にぶつかる小惑星の軌道を変えることは可能か? 壮大な実験

2021.11.25
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小惑星ディモルフォス(左)に衝突しようとするNASAのDART探査機と、それを見守るイタリア宇宙機関のLICIAキューブ(右下)。この衝突により、ディディモス(右上)を周回するディモルフォスの軌道を変化させる予定だ。(IMAGE BY NASA/JOHNS HOPKINS, APL/STEVE GRIBBEN)
小惑星ディモルフォス(左)に衝突しようとするNASAのDART探査機と、それを見守るイタリア宇宙機関のLICIAキューブ(右下)。この衝突により、ディディモス(右上)を周回するディモルフォスの軌道を変化させる予定だ。(IMAGE BY NASA/JOHNS HOPKINS, APL/STEVE GRIBBEN)
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 11月24日(米国時間の23日)、米国カリフォルニア州にあるバンデンバーグ宇宙軍基地から、NASA(米航空宇宙局)のDART(Double Asteroid Redirection Test:二重小惑星方向転換試験)探査機が打ち上げられた。全てがうまく行けば、DARTは太陽の周りを10カ月間旅した後、2022年9月27日(米国時間の26日)に、ディモルフォスという小さな天体に衝突することになっている。

 直径160メートルのディモルフォスは、ディディモスという一回り大きな小惑星の周囲を11時間55分で周回する「小衛星」だ。DARTの使命は、ディモルフォスに時速2万4000キロで体当たりし、その軌道を変えることにある。(参考記事:「NASAが宇宙船を小惑星に衝突させようとする理由」

 この衝突によってDART自体も壊れるが、その衝撃でディモルフォスの軌道は小さく、短くなる。3億3000万ドル(約380億円)を投じたDART計画の目的は、将来地球に衝突するかもしれない小惑星を回避するための技術を実験することだ。小惑星の衝突は、地震や火山噴火といった他の自然災害と異なり、何年も前から予測できる。

 ディディモスもディモルフォスも、地球に脅威を与えているわけではない。また、今のところ、今後数百年のうちに地球に衝突する恐れのある小惑星は見つかっていない。とはいえ、小惑星はいつか確実に地球に衝突するとされていて、問題は起こるかどうかではなく、いつ起こるかだと、専門家たちはしばしば警告を発している。

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地球近傍天体

 NASAやその他の宇宙機関は、数十年前から地球の軌道と交わる軌道を持つ小惑星を探し、その将来的な動きを予測してきた。数百年先のリスクを予測し、備えられるようにするためだ。

 これまでに、直径1キロ以上の地球近傍小惑星は890個見つかっているが、今後数百年以内に地球に衝突する可能性があるものは一つもない。しかし、直径わずか140メートルの小惑星でも、衝突すれば広範囲に壊滅的な被害を与える恐れがある。しかも、そのほとんどはまだ発見されていない。シミュレーションによると、直径140メートル以上の地球近傍小惑星はおよそ2万5000個あるとされているが、現時点で発見されているのは約1万個だ。(参考記事:「小惑星ベンヌ、地球に衝突する確率が上昇、なぜ?」

 しかし、この先NASAの宇宙望遠鏡「地球近傍天体サーベイヤー」など複数の観測機が新たに運用される計画があり、天体発見のペースは速まると期待されている。地球に衝突する恐れのある小惑星が発見された場合、衝突までどのくらいの猶予が残されているかによって対策は変わってくる。

 もし、大きな小惑星が数カ月後に衝突するとわかった場合、選択肢は非常に限られてくる。その一つは、小惑星のすぐそばで核爆弾を爆発させることだ。核爆弾から出るX線によって小惑星の表面の一部が消滅し、その結果生じる噴出物が小惑星をわずかに突き動かせば、地球にぶつからない程度に軌道がずれる可能性がある。(参考記事:「地球への天体衝突が2.9億年前に急増、今も継続か」

 それほど大きくない小惑星で、しかも衝突まで長い期間があるとなれば、核爆弾を使う必要はない。DARTのような小回りの利く探査機を小惑星に衝突させて、軌道をわずかに変更させるだけで十分だ。わずかな変化でも、何年もたてば、ずれは大きくなり、地球への衝突を回避できる。

衝突実験

 DARTを建造した米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)は、10年以上前から、これを安全で効果的に試験するために、ディディモスとディモルフォスのような二重小惑星を利用できないだろうかと考えてきた。太陽を公転する小惑星の軌道を変更すると、いつか遠い未来に地球にぶつかるコースに載せてしまう恐れがある。しかし、今回のように二重小惑星のうち、大きな方の小惑星を周回する小天体の公転軌道を少し変更するだけであれば、小惑星系全体の軌道にはほとんど影響を及ぼさない。

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