ネイティブアメリカン文化遺産月間、写真家が選ぶこの一枚

6人の先住民写真家が作品を選び、自らの思いを語った

2021.11.20
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アイダホ州の多くの部族を取材するタラ・カーツナー氏は、クーダレーン族とネズパース族の血を引くアントワネット・ピーターズさんを撮影。カーツナー氏は、このプロジェクトを通して、自身の先祖であるネズパーズ族の伝統と改めて向き合うことができた、と話している。(PHOTOGRAPH BY TARA KERZHNER)
アイダホ州の多くの部族を取材するタラ・カーツナー氏は、クーダレーン族とネズパース族の血を引くアントワネット・ピーターズさんを撮影。カーツナー氏は、このプロジェクトを通して、自身の先祖であるネズパーズ族の伝統と改めて向き合うことができた、と話している。(PHOTOGRAPH BY TARA KERZHNER)

 11月、米国では「ネイティブアメリカン文化遺産月間」として、アメリカ先住民の歴史と米国への貢献を称え、その伝統と文化に改めて注目する。

 この取り組みの始まりは、1900年代初めのことだった。1916年、全米に先駆けてニューヨーク州で「アメリカンインディアンの日」が制定された。1976年には、10月10日~16日を「ネイティブアメリカンに関する啓蒙週間」と定める両院合同決議に、フォード大統領が署名した。14年後、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領(父)が、1990年11月を「米国ネイティブアメリカン文化遺産月間」と定める合同決議を承認した。最初の名称は、先住民に対する誤った認識が数十年間も続いていたことを示している。

 1カ月にわたって先住民文化に注目しようという取り組みは、これまでの固定概念や認識を破壊する好機となっている。ナショナル ジオグラフィックに写真を提供している先住民の写真家たちが、米国各地の先住民の伝統と文化の重要性を伝える作品を選び、自らの思いを語った。

テイリア・アーバイン氏、セイリッシュ族/クートニー族

生後6週間の乳児。ブラッド・クアンタムの値で、その人生が大きく左右されることになるだろう。(PHOTOGRAPH BY TAILYR IRVINE)
生後6週間の乳児。ブラッド・クアンタムの値で、その人生が大きく左右されることになるだろう。(PHOTOGRAPH BY TAILYR IRVINE)

 写真家のテイリア・アーバイン氏は、自分の作品を通じてアメリカ先住民の本当の姿を見てもらいたいと考えてきた。先住民でない人々でもその写真に共感できることを願っている。

「写真家、エドワード・S・カーティス氏は先住民を『消えゆく民』と呼び、先住民はその固定概念に苦しんできました。でも、私たちは消滅してはいません。私の取り組みで、この固定概念を取り除き、正しい認識を伝えたいのです」と、アーバイン氏は話している。(参考記事:「北米先住民を撮り続けた写真家エドワード・S・カーティスの功罪」

 また、写真撮影で伝統にスポットを当てたいと願う他の意欲的な先住民の写真家たちの先例になりたい、と考えている。

 取り組みの一環として、アーバイン氏は「ブラッド・クアンタム(血液定量制)プロジェクト」を手がけている。これは、1900年代初頭に米国政府が用いたブラッド・クアンタム制度の矛盾にスポットを当てるものだ。この制度はもともと、先住民一人ひとりの「先住民の血」の割合(1/2、1/4、1/8……など)を特定し、規制するために導入された。この写真では、乳児のブラッド・クアンタムを、本人の将来に大きな影響をもたらすものとして提示した。

「この女の子はまだ生後数週間ですが、人生に大きな影響をもたらす可能性がある分数がすでに決まっています」と、アーバイン氏は言う。「まだ首もすわらないのに、この子が産む子どもの分数にまで話が及ぶのです」

マティカ・ウィルバー氏、スウィノミッシュ族/トゥラリップ族

伝統の「Ch'a~lh wvn Srdee-yvn(花のダンス)」の盛装を披露するテキシー・ジョーンズ・スコットさん、ツインテ・スタインリュックさん、チフスキー・ジョーンズ・スコットさん、デライナ・ボメリンさん、アリー・カステローさん。2021年10月、カリフォルニア州スミス川河口のトロワ族居留地で撮影。(PHOTOGRAPH BY MATIKA WILBUR)
伝統の「Ch'a~lh wvn Srdee-yvn(花のダンス)」の盛装を披露するテキシー・ジョーンズ・スコットさん、ツインテ・スタインリュックさん、チフスキー・ジョーンズ・スコットさん、デライナ・ボメリンさん、アリー・カステローさん。2021年10月、カリフォルニア州スミス川河口のトロワ族居留地で撮影。(PHOTOGRAPH BY MATIKA WILBUR)

 マティカ・ウィルバー氏は、カリフォルニア州スミス川河口のトロワ族居留地で、「Ch'a~lh wvn Srdee-yvn(花のダンス)」の盛装をした少女たちを撮影した。ウィルバー氏は、ワシントン州沿岸のスウィノミッシュ族とトゥラリップ族の出身だ。アメリカ先住民に対する認識を変えるため、「プロジェクト562」と題するドキュメンタリーの一部として、米国の400以上の部族を撮影してきた。

「誤った『先住民の絶滅物語』を覆し、先住民の主権、自己決定、関係性、回帰、未来志向といった物語を支持したい。その方法として、先住民主導の目に見えるコンテンツの力を確信しています」とウィルバー氏は話している。

「この写真から、私たちの文化が健在であることやコミュニティーが回帰していること、そして、先住民としての私たちの将来が感じられるでしょう」

次ページ:先住民の「神話化」に屈しない

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