プランクトンのミクロな映像がすごい、ミジンコの出産シーンまで

闇にうごめく地球のものとは思えない生物が次々に、短編映画『プランクトニアム』

2021.11.22
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【動画】映画『プランクトニアム』予告編(BY JAN VAN IJKEN, WITH SOUND COMPOSITION BY JANA WINDEREN)

「マグロやカニの幼生もプランクトン」

 プランクトンは海の食物連鎖の土台でもある。シロナガスクジラは1日に16トンものプランクトンを食べる。プランクトンと無関係な海洋動物はいない。1例を挙げるとすれば、ラッコもそうだ。(参考記事:「クジラは想像以上の大食いだった、従来推定の3倍も、研究」

 ラッコの好物は二枚貝のイガイ類だが、イガイはプランクトンを食べているし、そのイガイ自体も幼生はプランクトンだ。「プランクトンがいなければ、ラッコもいないわけです。そのくらい単純な話です」とウートン氏は言う。

 そのため、魚介類を好んで食べる人は当然、プランクトンに注意を払うべきだと米ルイジアナ大学ラファイエット校の生物海洋学者であるケリー・ロビンソン氏は言う。

「皆さん、マグロやカニは大好きでしょう? マグロやカニの幼生もプランクトンなのです」

「私たちが今後もさまざまな海洋生物を捕獲し、食べ続けるためには、プランクトンの役割を理解する必要があります」とロビンソン氏は言う。氏はそのために、エル・ニーニョ現象などの長期的・短期的な気候変動がプランクトンの大発生に及ぼす影響を研究している。プランクトンの増殖はクラゲの個体数にも影響を及ぼす。(参考記事:「クラゲの大量発生に利点? 実は多くの動物の餌に」

プランクトンの伝道師

 プランクトンの姿から宇宙人を連想したファン・エイケン氏は、SF映画のようなスタイルで『プランクトニアム』を撮影した。漆黒の闇を背景にうごめく、地球のものとは思えないような生物が次々に登場する。(参考記事:「【動画】生命誕生 1個の細胞が孵化するまで」

グロエオトリキア属(Gloeotrichia)のシアノバクテリア(藍藻)は、ある種の淡水生物に毒性を示すことがある。(PHOTOGRAPH BY JAN VAN IJKEN)
グロエオトリキア属(Gloeotrichia)のシアノバクテリア(藍藻)は、ある種の淡水生物に毒性を示すことがある。(PHOTOGRAPH BY JAN VAN IJKEN)
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 ファン・エイケン氏は、純粋なアーティストとしてこの映画の撮影に取り掛かったが、その過程でちょっとしたプランクトンの伝道師になったという。

「網を持って外に出ると、人々が私を見て『何をしているのですか?』と聞いてきます」と氏は言う。「私が『プランクトンの映画を作っているんです』と答えると、今度は『プランクトン? プランクトンって何ですか?』と聞かれます」

 もちろん、ファン・エイケン氏は喜んで説明する。

特別な瞬間

 プランクトンは地球にとって欠かせない生物だが、プランクトンの専門家であっても、ファン・エイケン氏の映画で紹介されているような細部を見ることはめったにない。ほとんどの科学者は、サンプルを固定して保存する際にプランクトンを殺さなければならないからだ。

 映画の中に、ミジンコが半透明の子を産む場面がある。生まれてくる子はすでに親と同じ形をしていて、透明だ。

 映画を見ながらZoomでのインタビューに答えたウートン氏は、「これはすごい!」と叫んだ。「このミジンコの生きたサンプルを持っていますが、出産するところは見たことがありません。特別な瞬間がとらえられています」

 ロビンソン氏はこの映画について、種名や説明の字幕があればよかったと思うものの、「美しい映画」だと評価し、自分の授業で使うかもしれないと話した。

 ウートン氏は、この映画がきっかけとなって次世代のプランクトン科学者が誕生するかもしれないと考えている。

「人々の関心を引きつけることが重要です」と氏は言う。「プランクトンの世界はとても美しいのです。うっとりするような、不思議な世界です。そして、その大部分はまだ解明されていません」

特集ギャラリー:夜の海に漂う生命 写真11点(写真クリックでギャラリーページへ)
特集ギャラリー:夜の海に漂う生命 写真11点(写真クリックでギャラリーページへ)
ヘイズがインドネシア沖で撮影した若いコンゴウフグ。デュビレは潮の流れに身を任せる夜のダイビングを、宇宙遊泳にたとえる。「どの方向が上かを知るには、空気の泡が上っていく方向を見るしかないんです」(PHOTOGRAPH BY JENNIFER HAYES AND DAVID DOUBILET)

文=JASON BITTEL/訳=三枝小夜子

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