絶滅から動物を守る「箱舟」、1万2000種目は“新参コブラ”

写真家サートレイが進める「PHOTO ARK(写真の箱舟)」プロジェクト

2021.11.19
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フードを広げて威嚇するアラビアコブラ。アラブ首長国連邦(UAE)のアラビア野生生物センターで撮影。(JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
フードを広げて威嚇するアラビアコブラ。アラブ首長国連邦(UAE)のアラビア野生生物センターで撮影。(JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 まだ朝の6時45分にもかかわらず、写真家のジョエル・サートレイ氏の服はまるで「プールに放り込まれた」かのように汗でびしょぬれになっていた。

 9月の蒸し暑い朝、サートレイ氏はアラブ首長国連邦(UAE)のアラビア野生生物センターで厩舎の床に寝そべり、オグヌローなどの有蹄類を撮影していた。UAEでは、秋でも気温が40℃を超えることもある。あまりの暑さのため、被写体を照らす4つの照明のうち3つがつかなくなったという。

 しかし、そんなことはサートレイ氏にとっては朝飯前だった。氏はその後の2週間で、北アフリカと中東原産の200以上の新たな種をナショナル ジオグラフィックの「Photo Ark(フォト・アーク、写真の箱舟)」に追加した。Photo Arkは世界中の動物園や野生生物保護区に暮らす生物1万5000種を撮影するプロジェクトだ。(参考記事:「Photo Ark 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト」

 サートレイ氏は、自然保護区も兼ねるアラビア野生生物センターでアラビアワシミミズク、北西アフリカチーター、サンドガゼル、絶滅の危機にあるアラビアヒョウ(ヒョウの亜種)などの印象的な動物を記録した。

 サートレイ氏はPhoto Arkを「自然の代わりに行っている長期的な広告キャンペーン」だと表現し、とりわけ、今にも絶滅しようとしている3万5500種の動植物の代理人のようなものだと述べた。「地球を救うため、人々に一刻も早く目覚めてもらうには、人々に、これらの問題をいつも頭においてもらわなければなりません」。地球では、毎日、何十もの種が絶滅している。その主な原因は生息地の破壊、汚染、気候変動など人為的なものだ。(参考記事:「南米の小さなヤマネコ「コドコド」を知ってますか」

 中東に滞在中、サートレイ氏は1万2000種の大台を突破した。どの動物を1万2000番目に記録したかは把握していないが、同氏はこの節目の代表としてアラビアコブラを選んだ。これまで、爬虫類がPhoto Arkのスポットライトを浴びたことがなかったためだ。2月に発表された1万1000種目は、米国南西部に生息するガの一種、ロングトゥースト・ダートモスだった。(参考記事:「130年以上前に発見された蛾、ついに生きた姿を撮影」

 アラビアコブラ(Naja arabica)は科学者の間でもあまり知られていない。UAE、サウジアラビア、イエメン、オマーンを含むアラビア半島全域に生息するが、ほとんど見かけることがない。2009年まではエジプトコブラの亜種だと考えられていた。つまり、種としては新参者だ。

 アラビアコブラはほかのコブラと同様、頭の後ろのフード(頭巾)と呼ばれる部分の皮膚を広げて威嚇する。サートレイ氏自身も撮影中にこの威嚇を体験した。アラビアコブラは毒を持つため、同氏は通常より被写体から離れ、長いレンズを使用し、素早く作業した。

 長年にわたって野生生物の写真を撮り続けてきたサートレイ氏は、ほとんどの種に平気で近づくが、安全第一であることに変わりはない。「かまれるのはごめんですから」。中東では毎年、アラビアコブラにかまれた人が命を落としている。

 11月16日、サートレイ氏はいつもと逆の立場になり、彼自身がカメラの前に立った。米放送局ABCの昼のメロドラマ「ジェネラル・ホスピタル」で本人役を演じ、アラビアコブラをPhoto Arkの1万2000番目の種として番組中で正式に発表したのだ。

「エミー賞の“最もぎこちない演技賞”を取りますよ」とサートレイ氏はジョークを言い、「ただし、きちんとした目的があります。これまで存在すら知られていなかった動物を世界に紹介することです」と話す。

次ページ:見えてきたゴール

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