「ほんとうに大きな発見です」と、ベルギー王立自然科学研究所の古生物学者ニノン・ロビン氏は言う。「今回見つかった化石はめったにないもので、本当に運が良かったのだと思います」

礼儀正しい「いそうろう」

 生物同士のパートナー関係にはさまざまなものがあり、「住み込み共生」関係は、両方の生物が利益を得る「共生」と、一方の生物がもう一方を犠牲にして利益を得る「寄生」のちょうど中間に位置する。宿主となる生物がまだ生きている場合(例えばムール貝の中に小さなカクレカニがすんでいる場合など)、宿主は特に利益を得るわけではないが、かといってそれで何か困るわけでもない。居候となる側は、宿主に何の返礼をすることなく安全を手に入れることができる。(参考記事:「数十万種に広がった成功戦略、双方が利益を得る「相利共生」とは」

 ところでヤドカリは自分で殻を作らず、巻き貝など、殻を作るほかの生物が放棄したものを活用する。ヤドカリが他人の殻を利用するのは生きていくうえで不可欠だが、エビを含むそのほかの住み込み共生動物が求めているのは利便性だ。

 住み込み共生は、動物の歴史の中で「かなり早い時期に始まった」と語るのは、論文の執筆者のひとりで、米アラバマ大学の古生物学者アディエル・クロンプメーカー氏だ。

 現在知られている中で最も古い動物は、諸説あるものの、5億4100万年以上前に進化したと考えられている。貝殻を持つ動物は、そのしばらく後に出現した。一部の動物が貝殻を進化させると、やがてほかの動物がその貝殻を隠れ場所として使うようになったと、クロンプメーカー氏は言う。

 住み込み共生の化石として信頼できる現在最古の例は、約4億8500万〜4億4400万年前のオルドビス紀にいた頭足類オウムガイの殻の中から発見された、絶滅した海洋節足動物の三葉虫だ。また、絶滅した軟体動物アンモナイトの中からも、さまざまな海洋生物が発見されている。アンモナイトは、直径約1.8メートル近くにもなる独特の螺旋状の貝殻を持っていた。(参考記事:「カニがイソギンチャクのクローン作り共生維持か」

「大きなオウムガイやアンモナイトの中は、奥まで入っていけるのでより安全でした」とビックネル氏は言う。しかし、窮地に陥った場合には、二枚貝で間に合わせるしかないこともあったのだろう。

【動画】化石101
化石とは、はるか古代から聞こえてくる反響のようなもの。化石には大別して2種類あり、どうやって化石になり、また地球の歴史をひも解くうえで化石の重要な役割を知ろう。

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