謎の人類ホモ・ナレディは死者をわざと洞窟で処分していた?

洞窟の入り組んだ奥深くでホモ・ナレディの子ども化石を発見、深まる謎

2021.11.10
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南アフリカのライジング・スター洞窟系の入り口に座る人類学者マリーナ・エリオット氏。同氏のチームは、この洞窟の曲がりくねったトンネル網の奥にある通路で、新たな遺骨を発見した。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK)
南アフリカのライジング・スター洞窟系の入り口に座る人類学者マリーナ・エリオット氏。同氏のチームは、この洞窟の曲がりくねったトンネル網の奥にある通路で、新たな遺骨を発見した。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK)
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 地下45メートルにある狭い裂け目に入った人類学者のレベッカ・ペイショット氏は、体をよじらせ、少しずつ曲がりくねった通路を進み、小さな岩棚にたどり着いた。そこには「お宝」が待ち受けていた。24万年以上前に生きた1人の子どもの歯と骨の断片だ。「ホモ・ナレディ」として知られる謎の人類の子どもだった。

 2013年に最初の化石が見つかって以来、ここ南アフリカのライジング・スター洞窟系では、2000個近くにのぼるホモ・ナレディの骨と歯が採集されてきた。今回発見された子どもの化石は4歳から6歳の間に死亡したと推定され、6本の歯と28個の頭蓋骨の断片が見つかっている。(参考記事:「謎の人類ホモ・ナレディ、生きた年代が判明」

 2000個の断片はいずれも、足のすくむような垂直の岩壁や、通り抜け困難な狭い通路を攻略しないと、発見できなかった。しかしペイショット氏らによる今回の発掘作業は、これまでで最も困難なものだったかもしれない。

 この子どもの骨は、地元のセツワナ語で「失われた者」を意味する「レティ」の愛称で呼ばれている。そして迷路のような洞窟で見つかったレティは、ある疑問を投げかける。一体、ホモ・ナレディはどのようにして、そしてなぜ、この暗くて曲がりくねった洞窟の奥深くに入っていったのか?

ライジング・スター洞窟のディナレディと呼ばれる空間には、少なくとも15体のホモ・ナレディの遺体があった。写真はそのうちの1体。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK)
ライジング・スター洞窟のディナレディと呼ばれる空間には、少なくとも15体のホモ・ナレディの遺体があった。写真はそのうちの1体。(PHOTOGRAPH BY ROBERT CLARK)
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「このような場所でホモ・ナレディの骨が見つかるとは、関係者の誰もが予想していませんでした」と、米ウィスコンシン大学マディソン校の古人類学者ジョン・ホークス氏は話す。「ありえないような通路を何十メートルも進むのです」

 レティの骨の発見は、11月5日付けで学術誌「PaleoAnthropology」に発表された。この骨は、2017年と2018年に行われた洞窟最深部の調査で発見された。研究チームはまた、300メートル以上の新しい通路をマッピングし、同じく11月5日付けで同誌に発表した。

 この研究によって、より広いライジング・スター洞窟系から「ディナレディ・サブシステム」への入り口は、1つしかないことが明らかになった。ディナレディ・サブシステムは、これまでに大多数のホモ・ナレディの骨が発見されている「ディナレディ」と呼ばれる空間と、周辺の複雑な通路群を指す。今回のレティの骨は、このサブシステムの入り口から通路を30メートルも進んだ奥深いところに残されていた。

 今回の発見は、ホモ・ナレディが死者を意図的に処分するために遺体を持ち込んだ可能性を示唆しているという。「この小さな子どもの頭蓋骨が、こんなにも手の届きにくい危険な位置にあることの理由は、他に見当たりません」。今回の発見についての記者会見で、南アフリカのウィットウォーターズランド大学の古人類学者であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー・アット・ラージでもある調査隊のリーダー、リー・バーガー氏はそう述べた。

 しかし、この研究に参加していない科学者の中には、まだ納得していない人もいる。ホモ・ナレディが死者を洞窟に運んだかどうかは、古人類学者や考古学者にとって重大な意味を持つ。死者を意図的に扱うことは文化の複雑さを意味し、現生人類であるホモ・サピエンスにしかないと考えられていたからだ。

次ページ:ジャングルジムのような洞窟

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