英国のグラスゴーで開かれているCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)で、2030年までに森林破壊をなくすとする共同声明が発表された。喜ばしい宣言に見えるが、再び口先だけのものになるとの懸念もある。具体的な行動が伴わなければ、森林破壊が続き、加速するおそれもあるからだ。
議長国である英国のボリス・ジョンソン首相は熱くこう呼びかけた。「偉大で豊かな生態系は、自然という大聖堂を支える柱であり、地球の肺です。森林を守るだけでなく、その森を確実に取り戻せるように、一緒に取り組んでゆきましょう」(参考記事:「気候変動にどう立ち向かう? COP26で問われていること」)
米国の非営利研究団体「世界資源研究所」によると、熱帯での森林喪失による二酸化炭素(CO2)排出量は、国別の排出量ランキングに当てはめると中国、米国に次ぐ3位に相当するという。同時に世界の森林は、1年間で世界の排出量のおよそ20%にあたる約76億トンの炭素を大気から吸収している。
国際研究プログラム「グローバル・カーボン・プロジェクト」が11月4日に発表したデータによると、世界における2021年の化石燃料由来のCO2排出量は前年に比べて4.9%増加するという。これは、2020年に新型コロナウイルス流行の影響で5.4%減った分を打ち消すほどの増え方だ。実際、今年の石炭と天然ガスの使用量は、パンデミック前のレベルを超えると予想されている。こういった点を踏まえれば、今回の合意はさらに重要になるだろう。
ジョンソン首相ほど楽観的ではないものの、森林に関するグラスゴー宣言を歓迎する声もあがっている。
「熱帯雨林への取り組みなくして、排出量ゼロは実現できません」と、英バンガー大学で自然保護を研究するジュリア・ジョーンズ氏は話す。「だからこそ、会議の早い段階で多くの人が集まってこの問題を検討できたことが、とても重要なのです」
ジョーンズ氏によると、特に重要なのは、今回の宣言が「リアルマネー」に裏打ちされていることだ。
配分の明細は明らかになっていないが、宣言には世界森林金融協定(Global Forest Finance Pledge)が含まれている。これは、「森林と持続可能な土地利用の可能性を引き出すことに役立てるため」に、11の国と欧州連合(EU)が120億ドルの資金を提供するというものだ。
さらに、米国のジョー・バイデン大統領は、これから2030年までの間に90億ドルを追加拠出することを議会に働きかけたいと述べた。また、「先住民や地域コミュニティによる森林保有権を拡大し、森林や自然の保護における彼らの役割に対する認知度や対価を上げる」ことを目的として、民間部門から72億ドル、14の政府機関や個人から17億ドルが拠出される予定になっている。
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