なぜ米軍はかつて噴火する火山を爆撃したのか?

爆破、防御壁、冷却、祈り――噴火の被害を回避する試行錯誤の物語

2022.04.10
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1935年12月の朝、噴火中の米ハワイ州のマウナロア山に投下された爆弾が爆発する様子を上空から撮影した写真。溶岩がヒロの町に到達するのを防ぐため、米軍は重量600ポンド(約270kg)の爆弾を20発投下した。(PHOTOGRAPH BY ARMY AIR CORPS, 11TH PHOTO SECTION)
1935年12月の朝、噴火中の米ハワイ州のマウナロア山に投下された爆弾が爆発する様子を上空から撮影した写真。溶岩がヒロの町に到達するのを防ぐため、米軍は重量600ポンド(約270kg)の爆弾を20発投下した。(PHOTOGRAPH BY ARMY AIR CORPS, 11TH PHOTO SECTION)

 1935年、ハワイの巨大火山マウナロアが噴火し、赤熱した溶岩が人口1万6000人(当時)のヒロの町に向かって流れ下った。通常、火山が噴火したら、人間は避難するしかない。しかしこの年、科学者たちはちょっとした試みを実行することにした。

 同年12月27日、キーストーン・エアクラフト製の複葉爆撃機B-3とB-4の小部隊が、ヒロに迫る溶岩流の上空を飛行し、20発、TNT換算で3トン強分の爆弾を投下した。

 爆撃の目的は、マウナロア山の破壊でも、噴火を止めることでもない。地上や地下の流路を崩してヒロに向かう溶岩の流れを変え、危険を回避するためだった。この作戦は、爆発物を使って溶岩流の向きを変えようとする人類初の試みであり、その後も同様の作戦が続くことになった。

 これまでのところ、この種の回避策で危機を完全に防げた作戦は1つもない。溶岩の流出が続くかぎり、どんなに技術的に優れた作戦であっても、最終的には火山に負けるからだ。

 しかし英ケンブリッジ大学の火山学者エイミー・ドノバン氏は、意味がないわけではないと言う。溶岩流の向きを変えられれば、「避難する時間を稼げます。その間に住民は荷物をまとめることができます」

 溶岩の流れを変えようとする爆撃は、人々や土地を守るのに役立つのだろうか? 答えは複雑だ。この派手な減災方法が有効なのは、非常に特殊な条件が満たされている場合に限られ、そのうちのいくつかは完全に運任せだ。

2021年10月、スペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島にあるクンブレ・ビエハ火山から空に向かって噴出する溶岩。現在も続く噴火によって数百の家屋が破壊され、数千人が避難を余儀なくされている。(PHOTOGRAPH BY EUROPA PRESS VIA GETTY IMAGES)
2021年10月、スペイン領カナリア諸島のラ・パルマ島にあるクンブレ・ビエハ火山から空に向かって噴出する溶岩。現在も続く噴火によって数百の家屋が破壊され、数千人が避難を余儀なくされている。(PHOTOGRAPH BY EUROPA PRESS VIA GETTY IMAGES)

王女は火山の女神に祈りを捧げた

 マウナロア山は活発な火山活動で知られ、過去数世紀に何度も噴火を繰り返している。火山に近いヒロの人々は(現在の人口は約4万5000人)、噴火から財産や生活を守るために様々な方法を試みてきた。

 1881年の夏。噴火に立ち向かうため、ヒロの村人たちは小さな岩壁を築いたが、壁はあっという間に溶岩流にのみ込まれてしまった。そこで、ハワイ王国を建国したカメハメハ大王の子孫であるルース・ケエリコラニ王女が現地を訪れ、火山の女神ペレに祈りを捧げ、ブランデーやスカーフなどを供えた。まもなく溶岩流は止まったが、王女の祈りでも止まらなかった場合に備えて、地元当局は溶岩流の手前で多量の爆薬を使う準備をしていたという。(参考記事:「ハワイ王国最後の「悲劇の女王」、リリウオカラニの物語」

 1935年11月。マウナロア山の噴火がまた始まると、当局は再び爆破を計画した。12月23日には、ヒロに水を供給しているワイルク川の水源まで溶岩が到達しそうになった。

 溶岩流は、自らが作り出した流路や地中の溶岩チューブ(溶岩流の表面が空気や土に触れて冷え固まり、内部を高温の溶岩が流れているもの)を通ってヒロの方向へ流れ下った。地中のチューブは断熱材の役割も果たしたため、中を流れる溶岩は溶融状態を長く保っていた。

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