キツネザルの歌で「リズムパターン」を発見、人間と鳥以外で初

2つの音の長さが1:1か1:2のまとまり、合唱もするインドリ

2021.10.27
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歌うキツネザルとして知られるインドリの歌で、人間以外の哺乳類で初めて「カテゴリカルリズム」という音楽的なパターンが見つかった。写真は、マダガスカルのアンダジブ・マンタディア国立公園のインドリ。(PHOTOGRAPH BY JASON EDWARDS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
歌うキツネザルとして知られるインドリの歌で、人間以外の哺乳類で初めて「カテゴリカルリズム」という音楽的なパターンが見つかった。写真は、マダガスカルのアンダジブ・マンタディア国立公園のインドリ。(PHOTOGRAPH BY JASON EDWARDS, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 マダガスカル島に暮らす歌うキツネザルのインドリ(Indri indri)の研究者らが、数百もの歌を分析した結果、2つの音の長さが一定の間隔になるリズムが使われていることを発見した。これまで、こうしたリズムを駆使して歌うのは人間の他には鳥類だけとされ、人間以外の哺乳類で発見されたのは初めてだ。

「インドリは、歌で意思の疎通をする唯一のキツネザルです」と、イタリア、トリノ大学の霊長類学者キアラ・デ・グレゴリオ氏は言う。氏が筆頭著者を務めた論文は、10月25日付けで学術誌「Current Biology」に発表された。

 それによると、インドリは2匹でデュエットしたり、3匹以上で合唱することもあるという。歌を歌う目的は、いなくなった家族を探したり、縄張りを主張したり、隣近所と喧嘩するためだ。

 インドリの歌を聴いても、人間の耳には子どもがエアホーンで遊んでいるようにしか聞こえないだろう。だが、そのキーキー声や叫び声のなかには、人間の音楽と重なる一定間隔の音のパターンが含まれている。

 人間とインドリは同じ霊長類ではあるが、両者の共通祖先が枝分かれしたのは、まだ恐竜がこの地上を歩いていた頃であることを考えると、デ・グレゴリオ氏らの発見はますます興味深くなる。

 デ・グレゴリオ氏らは12年もの間、夜明け前に起きては重い足取りで多雨林の中を歩き、突然の大雨に機器をずぶぬれにされ、吸血ヒルと格闘した。そうやって非協力的なインドリを追い続けた末に、ついに驚きの発見という報酬を手に入れた。

「何日も雨のなか震えながら、インドリが歌うのを待っていたかいがありました」と、デ・グレゴリオ氏は話す。

音楽のリズムとは何か

 インドリの歌がなぜ特別なのかを理解するには、音楽について知る必要がある。

 2015年、東京藝術大学(当時)のパトリック・サベジ氏率いる研究チームが、世界中で録音された300曲以上の音楽を分析したところ、大陸も文化も違う音楽の中にいくつもの共通点が浮かび上がってきた。そして、特定の音程やフレーズの繰り返しなど、12種類以上の特徴が挙げられた。

 そのうち8つはリズムに関係するものだった。具体的に言うと、2つの音をひとつのまとまりとして構成された音楽が多かった。こうした構造は「カテゴリカルリズム」と呼ばれ、主に、メトロノームのように2つの音の長さが同じ1:1と、1つの音の長さが他の音の2倍になる1:2のパターンがある。

 例えば、クイーンのヒット曲「ウィー・ウィル・ロック・ユー」を思い出してほしい、と論文の共著者でオランダにあるマックス・プランク心理言語学研究所の生物音楽学者のアンドレア・ラビニアーニ氏は言う。足を踏み鳴らし、手を叩いて、タ・タ・タンというパターンを繰り返す。これは1:2のパターンを含む代表的な例だ。「人間が作る音楽のリズムパターンとしてはとても一般的です」

次ページ:【動画】インドリのデュエット

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