ここ1、2年で自転車に乗っている人が増えたように感じるとしたら、それは気のせいではない。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の間に自転車利用者の数が激増し、数年ぶりに自転車に乗ったという米国人も多い。この傾向は、今後長く続くのだろうか?(参考記事:「ポスト・コロナ時代 通勤や交通は変わるのか」)
さまざまな理由で、これは望ましい傾向だ。米国における温室効果ガスの最大の排出源は交通機関であり、そのなかでも乗用車と小型トラックが58%を占めているからだ。自動車を自転車に乗り替えれば、電気自動車に替えるよりずっと早く排出を削減できる。
また米国では、自動車やバイクによる交通事故で1年に3万9000人(うち自転車に乗っていた700人以上)もの人が亡くなっている。
自転車フレンドリーではない国、米国
米国が自転車フレンドリーな国でないことは明らかだ。米国人が通勤や買い物、休みの日などに使う移動手段のなんと87%が乗用車や小型トラックで、自転車が占めるのはたった1%に過ぎない。
米国の自転車使用に関するデータを収集している非営利組織、全米サイクリスト同盟(LAB)によれば、米国人が1年間に自転車に乗る回数は、パンデミックが発生するまでの数年間、減り続けていた。自転車で通勤する人の数は、2014年の約90万人から2019年には80万人強にまで減少した。これは全通勤者のうちの約0.5%だ。
「通勤をする人の割合が減る一方で、自転車に乗っていて事故で亡くなる件数が増えていたのです」と、LABの政策責任者であるケン・マクラウド氏は話す。
これに比べて、たとえばオランダでは、自転車通勤者の割合は27%に上る。しかし、オランダの街が昔から自転車フレンドリーだったわけではないと言うのは、米ラトガーズ大学の都市計画名誉教授で、自転車使用を専門とするジョン・パチャー氏だ。
「米国人は、『ヨーロッパは昔から自転車天国なんでしょ』というようなイメージを持っています。でもそれはまったくの誤解です」と、パチャー氏はナショナル ジオグラフィックのポッドキャスト「Overheard」のインタビューで語った。
もしも今、ヨーロッパのどこかの街が自転車天国のように見えるとしたら、それは人びとが何十年も、都市の中に車と別の自転車専用のスペースを作ることを強く求めてきたからだと氏は言う。そして現在、米国にも同様の動きが始まっているところがある。(参考記事:「地球にやさしい都市設計で自転車中心の街に、コペンハーゲン」)