米ニューヨーク市で取り壊されたビルからダイオウマツの材木を取り出す作業員。こうした材木には、これまでに知られていたより何百年も前の気候の手がかりが残されている。(PHOTOGRAPH BY ALAN SOLOMON)
米ニューヨーク市で取り壊されたビルからダイオウマツの材木を取り出す作業員。こうした材木には、これまでに知られていたより何百年も前の気候の手がかりが残されている。(PHOTOGRAPH BY ALAN SOLOMON)
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 かつて米国東部に広がっていた古い森(老齢林)は、1900年代初頭にはほぼ消滅してしまった。しかし、そこから採取された木がたくさん残されている場所がある。ニューヨーク市のビルの壁の中だ。

 これらの材木の年輪は、過去の気候データに関する情報源となるため、研究者たちが解体現場の材木の回収に取り組んでいる。米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所の「Tree Ring Lab(年輪ラボ)」のチームが着目しているのは、鉄骨が普及する1920〜30年代以前に建てられた建物だ。なぜなら、大半が米国の老齢林の材木を使っているからだ。(参考記事:「9・11跡地の木造船、建造年代を特定」

 樹木が成長とともに毎年1つずつ形成する年輪は、一般的には降雨量が多いほど幅が広くなる。まれに、標高の高い場所にある木では、気温が高いほど幅広になる場合もあるというように、年輪にはその時の環境条件が反映される。

ニューヨーク市マンハッタンの解体現場で採取された接合部分のサンプル。比較的幅の狭い年輪がいくつもあることから、おそらくは古い森由来のゆっくり成長した木であることがわかる。(PHOTOGRAPH BY MUKUND P RAO)
ニューヨーク市マンハッタンの解体現場で採取された接合部分のサンプル。比較的幅の狭い年輪がいくつもあることから、おそらくは古い森由来のゆっくり成長した木であることがわかる。(PHOTOGRAPH BY MUKUND P RAO)
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 年輪ラボでプロジェクトを率いる一人、ムクンド・ラオ氏によると、ニューヨーク市の建築物に使われた木の多くは、伐採された100年以上前の時点で樹齢200〜300年だったという。つまり、木が芽吹いたのは米国建国(1776年)のはるか前、場合によっては1500年代以前だったことになる。これらの材木によって、既存の気候データに欠けていた部分を補うことができる。

「こうした非常に古い材木があれば、より古い時代までさかのぼって過去を知ることができます」とラオ氏は言う。おかげで、近年の気候パターンの変化を、より歴史的な脈絡にあてはめて考えられるようになる。

「現在の気温が前例のないものなのか、それとも通常の範囲内のものなのかがわかります。深刻な干ばつに関しても同様です」。やはりプロジェクトリーダーの一人であるキャロライン・リーランド氏はそう説明する。(参考記事:「バイキング、西暦1021年には北米定住、太陽嵐から解明」

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