インドネシアのバリ島の伝統音楽ガムランには、鉄琴が使われることが多い。バリ島からも、いくつかのラジオ局が放送を行っている。(PHOTOGRAPH BY DEGE PHOTO, ALAMY STOCK PHOTO)
インドネシアのバリ島の伝統音楽ガムランには、鉄琴が使われることが多い。バリ島からも、いくつかのラジオ局が放送を行っている。(PHOTOGRAPH BY DEGE PHOTO, ALAMY STOCK PHOTO)
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遠く離れた場所の音を「立ち聞き」

 Radio Gardenは、オランダ視聴覚研究所のプロジェクトとして始まった。デザイナーやコンピュータープログラマーたちは、ラジオ局の場所を世界の3Dマップに重ねて表示した。

 それによって、さまざまな旅が実現できるようになった。たとえば、コロンビアに立ち寄り、ロマンチックなアコーディオン音楽を聴けば、かつてその場所を訪れたときの記憶がよみがえる。バスに揺られながら、伝統音楽バジェナートやクンビアの中心地を旅したときのことだ。

 私の祖父母はアルゼンチンの出身で、今もそこに家族がいる。ここ米国の自宅の食卓に居ながらにしてアルゼンチンのラジオが聴けることを二人に伝えてからというもの、ブエノスアイレスのなつかしいラジオを耳にしない日はない。

 よみがえってくるのは、平穏な日々の鮮やかな記憶だ。暖かな午後、人があふれる広場に流れる若々しいラテンポップ。タンゴが生まれた地域にある石畳の道をあてもなく歩いた物憂げな夜。

 祖母はこう言う。「ときどき、とても長いこと聴いていなかったタンゴを聴くのよ。するとうれしくなる。声に出して歌えば、歌詞は自然に出てくる。タンゴを聴くと、子どものころを思い出すの」

 そう。ラジオを聴けば、自分の世界や人生を作り上げてきた心地よい音楽に触れることができる。今どこにいるかは関係ない。

 ひょっとすると、Radio Gardenの一番魅力的な部分は、さまざまな場所のなかでも、最も遠く離れた地を訪ねることができる点かもしれない。ずっと行ってみたかったけれど何らかの理由で行くことがかなわなかった場所に行って「立ち聞き」することができるからだ。

 たとえば私は、かつてのシルクロードの要衝、アフガニスタンのヘラートから届く伝統楽器ルバーブやフルートの音楽を聴きながら眠りについた。シリアの放送局「ラジオ・ダマスカス」の番組でアラビア語を学んだ。イランやウズベキスタンのエレクトロニック・ダンスミュージックを発見したし、音楽の点をたどってシベリアの果てまで行き着いた。

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