世界各国の調査機関は、報告された症例の遺伝子情報に基づいて、流行している株の種類を調査している。このデータを用いて、翌年の接種に使用する株が選択される。だが昨年は流行が非常に小規模だったために収集できたサンプルが少なく、この冬に流行する株の特定は例年より難しくなっている。

 今年のワクチンは、昨年のワクチンから2種類が変更された。専門家たちは、株の選択が的確であることを願っている。また、前向きな展開もある。継続した調査の結果、B型の山形系統が2020~21年の流行期に絶滅した可能性があることがわかった。

 特定のウイルスが絶滅する理由はまだわかっていないが、専門家たちは複数の仮説を立てている。

「インフルエンザウイルスには4つの型があり、通常は1つの流行期に1つだけが優勢になります」とウェビー氏は説明する。「私たちがマスクを着用したりソーシャルディスタンスを保ったりしてウイルスの活動が低下している間は、感染先を見つけるのが困難になり、絶滅するのかもしれません」

同時接種の安全性は

 感染予防対策では、もうひとつ吉報が届いている。査読前の医学論文を投稿するサイト「Preprints with The Lancet」に9月30日付けで公開された論文によれば、英国での臨床試験(治験)の結果、ファイザー製またはアストラゼネカ製の新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの同時接種の安全性が確認されたという。

 この治験には、1回目の新型コロナワクチンの接種を終えた679人が参加した。2回目接種を実施する際に、参加者の半数がインフルエンザワクチンの接種を、残りの半数はプラセボ(偽薬)の接種を同時に受けた。副反応は、2つのワクチンを同時接種しても増加せず、どちらのグループでも軽度から中度だった。また、ワクチンの効果も低下しなかった。

 インフルエンザワクチンを新型コロナワクチンの1回目と同時に接種しても問題ないと専門家は考えている。また、12歳未満の子どもに対する新型コロナワクチン接種はまだ承認されていないが、生後6カ月を過ぎていれば、インフルエンザワクチン接種を受けることはできる。2歳未満の幼児はインフルエンザウイルスにさらされたことがないので、特に感染しやすくなっている。

「インフルエンザワクチンの接種を受けてください。お子さんにも受けさせてください」と、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の伝染病専門医、モニカ・ガンディー氏は言う。「去年、インフルエンザワクチンの接種を受けていないお子さんは、特に高いリスクがあります」

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