今季のインフルエンザ、新型コロナと同時流行の恐れ

前年の流行なく免疫低下の可能性、専門家は対策の徹底を強調、米国

2021.10.16
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「学齢期の子どもたちは、コミュニティーにおけるインフルエンザ感染の推進力です」と米ベイラー医科大学の伝染病専門医でウイルス学者のハナ・エル・サーリー氏は指摘する。「新型コロナの感染を抑制した社会や行動の変化も、今季はあまり期待できません」

 8月、米ピッツバーグ大学が行った2つの数理的研究が査読前の医学論文を投稿するサイト「medRxiv」に公開され、非常に憂慮すべき結果が示された。両研究では、前年に感染者が少なかったことによる免疫低下の影響や、職場、学校、パーティーにおける交流拡大などの要因を分析し、インフルエンザ株の感染力が高いか、あるいはまったく新しい株が出現した場合について予測している。

 8月26日付けで公開された論文では、2021~22年のインフルエンザ流行期に、例年よりも感染者数が約20%増加する可能性があると計算された。米国では通常、感染者数は年間900万~4500万の間で推移するが、インフルエンザ株の感染力や特徴によっては、その2倍にまで跳ね上がる恐れがある。

 8月30日付けで公開されたもう一つの論文では、少し異なる手法を用いている。こちらの数理モデルは、2021~22年のインフルエンザ流行期に入院患者が60万人に上る可能性を示唆している。これは、平均的な流行期を少なくとも10万人以上も上回る規模だ。だが、ワクチンの接種率と有効性がともに半分になれば、入院患者は例年に比べて40万人増加する可能性がある。

「どちらの研究でも、ほぼ同じことを指摘しています。つまり今年は、非常に大規模なアウトブレイクが起きる可能性が高いということです」。両論文の筆頭著者である米ピッツバーグ大学公衆衛生大学院公共衛生ダイナミクス研究所のマーク・ロバーツ所長は、こう話している。

「対策としては、ソーシャルディスタンスの確保とワクチンの接種を継続することです。それが、今年のエピデミック(地域的大流行)の可能性を低下させます」と氏は言う。これらの予測結果は、予防策とワクチン接種への抵抗感が強く、まだ新型コロナの感染が拡大している地域では特に懸念される。

「米国中の所々で大流行が起きつつ、場所によって状況に大きな差が出るかもしれません」とロバーツ氏は言う。「新型コロナに対する警戒が不十分な地域では、インフルエンザと新型コロナの両方が流行する恐れがあります」

ワクチン製造株の的確な選定

 深刻な流行期の到来が危惧される現在、ロバーツ氏をはじめとする専門家は、より多くの人にインフルエンザワクチンを接種してほしいと強調している。

 インフルエンザのワクチンは通常、4価ワクチンで、不活化されたインフルエンザA型の2種類(H1N1とH3N2)、B型の2種類(ビクトリア系統と山形系統)の4種類の株が含まれている。

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