排泄物に埋もれ、目にかさぶた、研究用チンチラ飼育業者に厳罰

「悪夢」を見たと検査官、米国唯一の生産者が動物福祉法違反で免許取消に

2021.10.17
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 NPO動物福祉研究所の研究員エリック・クレイマン氏によれば、行政審判は18日間に及び、研究用の動物に関連する動物福祉法違反が審理されたのは6年ぶりだという(ミネソタ州の検察当局は8月、連邦政府の審理が継続中であることを理由に挙げ、モールトン氏を州の動物福祉法違反で訴追しないことを決定した)。

 クリフトン氏によれば、USDAが申し立てた100以上の違反行為すべてが立証されたという。今回の判決に異議がある場合、30日以内であれば不服申し立てができるとクリフトン氏は言い添えている。

 モールトン氏は行政審判で、施設の改善、より一貫した獣医療の確保など、さまざまな努力をしていると証言した。

 クレイマン氏は「USDAが行うことの多くがそうであるように」、違反行為が始まってから何年もたった今、免許取消を決定したのでは「あまりに遅すぎます」と話す。

 米オレゴン州、ポートランドにあるルイス&クラーク大学の法科大学院で動物法の教授を務めるラス・ミード氏も、もしモールトン・チンチラ・ランチの営業継続が認められれば、「動物福祉法は意味を成しません」と述べている。

 ジョリス氏が最初にチンチラを注文する数カ月前、USDAの検査官ブレントン・コックス氏がモールトン氏の施設を立ち入り検査した。コックス氏は行政審判で、施設で目にした死骸の「悪夢」を見たと証言し、この施設が「最悪の施設にどう対処すべきか」の訓練になったと述べた。

 コックス氏は2014年7月の検査中、生まれたばかりのチンチラの死骸がケージから落ち、ほかのチンチラの排泄物に埋もれているのを発見した。その2カ月後、コックス氏は検査報告書のなかで、チンチラたちの飲み水が緑色だったと指摘している。また、とがったくぎやさびた針金がケージの内側に向かっていたと報告している。

 ほかの検査官も、チンチラたちの目がかさぶたで覆われていたこと、獣医療が不十分であったことなどに気付いていた。検査官が指摘した健康問題は数カ月後も対処されていなかった。

【参考ギャラリー】体の割に耳が大きな動物たち 写真6点(クリックでギャラリーページへ)
【参考ギャラリー】体の割に耳が大きな動物たち 写真6点(クリックでギャラリーページへ)
モンゴル、ゴビ砂漠のオオミミトビネズミ。初めて映像に収められたのは2007年だ。(PHOTOGRAPH BY VALERIY MALEEV, NATURE PICTURE LIBRARY)

 コックス氏はさらに、モールトン氏は少なくとも2つの無関係なビジネスを行っており、チンチラの世話を十分できなかった可能性が高いと証言している。「彼には全く時間がなく、見回りする余裕すらありませんでした」

チンチラを使った研究は減少傾向

 研究所の供給業者であるモールトン・チンチラ・ランチを失えば、チンチラを使った聴覚研究の減少に拍車が掛かるかもしれない。

 チンチラはほかのげっ歯類より低周波音を聞く能力が高く、大きな耳とその構造を調べやすいことから、人の聴覚研究に用いられてきた。

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