コロナで糖尿病を発症、米で年10万人、膵臓に深刻な被害の恐れも

糖尿病とウイルス感染の関係、長年の謎の解明につながるか

2021.10.13
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 一方で、新型コロナが糖尿病を引き起こすという陣営にいる研究者らもまた、新たに糖尿病と診断された人たちの中には、すでにその傾向を持っていた人が含まれている可能性を認めている。時間がたてば高血糖が解消される患者がいるだろうとも予測する。しかし、それ以上のことが言えるデータも存在しないと、彼らは主張する。今回のパンデミックは、長年にわたって研究者たちを悩ませてきた「ウイルスは糖尿病を引き起こすのか」という問題の答えを見つける絶好の機会ともなっている。

結束して糖尿病の謎に挑む研究者たち

 科学者たちは長年にわたり、1型糖尿病は感染症によって引き起こされるという仮説を立ててきた。たとえば免疫系が甲状腺を攻撃する橋本病や、免疫系が全身の健康な組織を攻撃する狼瘡(ろうそう)といった自己免疫疾患もまた、ウイルスによって引き起こされると疑われている。

 しかし、こうした仮説を証明するだけの十分な証拠はこれまで見つかっていない。過去のSARSやMERSの流行後にも糖尿病と診断された人たちはいたが、非常にまれなケースだったため、なんらかの結論を出すには至らなかった。新型コロナ感染症の場合には、はるかに多くの人が感染したことにより、データの収集が現実的に可能になったと、英ロンドン大学キングス・カレッジの代謝・肥満外科学教授のフランチェスコ・ルビノ氏は言う。

 2020年8月、ルビノ氏をはじめとする主要な糖尿病研究者らは、新型コロナ感染症に関連する糖尿病患者の登録を世界的に開始し、ついにそうした情報を集める段階にこぎつけた。

「新型コロナが実際に糖尿病を引き起こすことがある程度の確信をもって証明されれば、それが糖尿病の背後にウイルスのメカニズムがあるという概念の証拠となります」とルビノ氏は言う。

 ルビノ氏によると、登録者数は最終的に620件を超えたという。これだけのサンプルがあればデータの分析を開始するには十分だと、研究チームは判断した。登録患者の中には、時間の経過とともに高血糖症が解消される者もいることが予想される。

 それでも研究チームは、ほんとうに糖尿病を患っている人たちの中に、何らかのパターンがあるかどうかを探っていく。最終的には、新たなタイプの糖尿病が発見されることもあるかもしれないと、ルビノ氏は述べている。

「これほど多くの研究者がこの研究に携わっている理由は、新型コロナ感染症についてだけでなく、糖尿病についても広く情報が得られる可能性があるからです」とルビノ氏は言う。「もしこのウイルスがほんとうに単独で、何もないところから糖尿病を引き起こすことがわかったなら、糖尿病についての常識を見直す必要が出てくるかもしれません。それは非常に重要な発見になります」

 新型コロナ感染後の糖尿病がどんなメカニズムで起こるにせよ、感染歴のある人たちにはぜひとも、糖尿病は多くの場合ひっそりと発症すること、そして深刻な合併症を引き起こす可能性があることを覚えておいてほしいと、ルビノ氏は指摘しする。そして、疲労感、頻尿、不可解な喉の渇きなどの初期症状に注意して、すみやかに治療を受けるよう勧めている。

「新型コロナに罹患した大多数の人には、問題は起こらないだろうと思われます。しかし、早く気がつくことができればそれに越したことはありません」

文=AMY MCKEEVER/訳=北村京子

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