新種ゴキブリ発見者の柳澤静磨さんが手にのせるのは、勤務先の磐田市竜洋昆虫自然観察公園の昆虫館で展示中のヨロイモグラゴキブリ(オーストラリア産)。「推しゴキブリ」を選ぶGKB48総選挙の第1回王者だ。写真の個体は2019年に誕生したもので、これからもっと大きくなるという。(写真提供: 柳澤静磨)
新種ゴキブリ発見者の柳澤静磨さんが手にのせるのは、勤務先の磐田市竜洋昆虫自然観察公園の昆虫館で展示中のヨロイモグラゴキブリ(オーストラリア産)。「推しゴキブリ」を選ぶGKB48総選挙の第1回王者だ。写真の個体は2019年に誕生したもので、これからもっと大きくなるという。(写真提供: 柳澤静磨)
[画像をタップでギャラリー表示]
この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年11月号に掲載された記事を再構成したものです。

 日本に60種ほどいるゴキブリ。害虫とされるが、人家に姿を現すのはわずかで、ほとんどの種は自然界で朽ち木などの腐食質を食べて生きている。2020年11月と2021年6月、日本産のゴキブリの新種が3種も立て続けに発表された。静岡県の磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員、柳澤静磨さんが法政大学の島野智之教授、鹿児島大学の坂巻祥孝准教授らと共同で研究して発見したものだ。

 3種とも“ 美麗種”とされるルリゴキブリ属で、大きさはそれほど違わないが、上翅に特徴的な模様がある。与那国島のウスオビルリゴキブリは不明瞭な黄赤色の帯、奄美大島などに生息するアカボシルリゴキブリは三つの黄赤色の紋、宮古島のベニエリルリゴキブリは基部の黄赤色の微毛と中央部の明瞭な黄赤色の帯が特徴だ。

宮古島に生息するベニエリルリゴキブリ。雄の全長は12.5~13ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
宮古島に生息するベニエリルリゴキブリ。雄の全長は12.5~13ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
[画像をタップでギャラリー表示]
奄美大島などに生息するアカボシルリゴキブリ。雄の全長は12~13ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
奄美大島などに生息するアカボシルリゴキブリ。雄の全長は12~13ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
[画像をタップでギャラリー表示]

 ウスオビとベニエリは絶滅のおそれがあるため、「種の保存法」に基づく緊急指定種に指定され、捕獲・殺傷・販売などが制限された。同法でゴキブリが保護されるのは初めて。「ゴキブリは嫌われていますが、生態系の一つのピースであって、分解者として重要な役割を担っています。自然を保護するには、生態系を広くとらえて保護することが必要です」と柳澤さんは話す。

 柳澤さんは自らを「ゴキブリスト」と呼び、自宅で国内外産の50種ほどを飼育している。だが、3年ほど前まではゴキブリが大の苦手だったし、幼い頃は昆虫図鑑のゴキブリも見たくないと、セロハンテープでページを貼り付けていたほどだという。

ウスオビルリゴキブリ。雄の全長が12.5 ~14.5ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
ウスオビルリゴキブリ。雄の全長が12.5 ~14.5ミリ。(写真提供: 柳澤静磨)
[画像をタップでギャラリー表示]

 柳澤さんをゴキブリストに変えたのが、2017年に仕事で訪れた石垣島で出合ったヒメマルゴキブリだ。この種の雌と幼虫はダンゴムシそっくりの姿をしていて、危険を感じると、ころんと丸まる。「それまでゴキブリに抱いていたイメージが完全にリセットされました」と柳澤さんは話す。

 その後は休暇ごとに沖縄などの離島へ採集旅行に出かけ、自宅で繁殖を始め、2018年からは職場の昆虫館でゴキブリ展を開催。そこでは50種ほどを展示し、アイドルグループさながらに「GKB48総選挙」を実施して来館者に「推しゴキブリ」を選んでもらっている。「よく見てもらって、おもしろい種類がたくさんいることを知ってほしい」と言う柳澤さんは、来年の展示に向けて構想を練り始めている。

2020年11月と2021年6月、日本産のゴキブリの新種が3種も立て続けに発表された。3種とも“ 美麗種”とされるルリゴキブリ属だ。雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年11月号に掲載された記事を再構成したものです。

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

2021年11月号

世界を驚かせた考古学の発見100/エチオピアの苦悩/南極の海の生命を守る/地球最南端の木/長い旅が教えてくれたこと

考古学の発掘調査が始まって2世紀。「世界を驚かせた考古学の発見100」は人類史をひもといた100の発見を振り返ります。今なぜエチオピアで内戦が勃発しているのか、国内情勢などを交えて詳しくレポートする「エチオピアの苦悩」ほか、まもなく9年を迎える人類の祖先の足跡を徒歩でたどるプロジェクト「長い旅が教えてくれたこと」、南米の最南端の島を調査した「地球最南端の木」などの特集をお楽しみいただけます。

定価:1,210円(税込)

文=大塚 茂夫(ナショナル ジオグラフィック日本版編集部)