気候モデルは、温暖化のレベルを予測し、気候変動が自然災害の直接の原因であることを突き止めている。その有効性が激しく批判された時代もあったが、今年は気候モデラーがノーベル物理学賞を受賞するまでになった。(PHOTOGRAPH COURTESY NASA)
気候モデルは、温暖化のレベルを予測し、気候変動が自然災害の直接の原因であることを突き止めている。その有効性が激しく批判された時代もあったが、今年は気候モデラーがノーベル物理学賞を受賞するまでになった。(PHOTOGRAPH COURTESY NASA)
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 10月5日、気候モデル開発の先駆者である真鍋淑郎氏とクラウス・ハッセルマン氏が、理論物理学者のジョルジョ・パリージ氏とともにノーベル物理学賞を受賞した。ノーベル物理委員会のトールス・ハンス・ハンソン委員長は、「気候に関する私たちの知識が、観測結果の綿密な分析に基づくしっかりした科学的基盤の上に成り立っていること」を称えるものだと語った。

 気候モデラー(モデル開発者)は、地球科学や惑星科学の専門家であり、応用物理、数学、計算科学分野の経験をもつことも多い。彼らは物理学と化学を用いて方程式を作成し、スーパーコンピューターに入力し、地球や他の惑星の気候をシミュレーションする。

 だが、気候変動を否定する人々は、長年にわたってモデルを気候科学の弱点と見なしてきた。気候モデルが導くのは必然的に予測であることから、検証不可能であり、不備なデータが不確実な結果をもたらしているという汚名を着せられていた。

2021年ノーベル物理学賞受賞者の真鍋淑郎氏、クラウス・ハッセルマン氏、ジョルジョ・パリージ氏(左から)。(ILLUSTRATION BY NIKLAS ELMEHED, NOBEL PRIZE OUTREACH)
2021年ノーベル物理学賞受賞者の真鍋淑郎氏、クラウス・ハッセルマン氏、ジョルジョ・パリージ氏(左から)。(ILLUSTRATION BY NIKLAS ELMEHED, NOBEL PRIZE OUTREACH)
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 1990年、ナショナル ジオグラフィック誌の記事は、こう書いている。「モデリングはまだ初期段階であり、現在の気候の詳細を再現することすらできないという批判がある。モデラーたちはその点を認め、モデルを微調整すれば、予測は必然的に変動すると述べている」

 しかし、その後に行われた分析で、ごく初期のモデルでも、その多くが地球温暖化をかなり正確に予測していたことがわかった。今日ではコンピューターの能力が向上し、モデル作成プロセスにも次々に改良が加えられ、モデラーたちは自らの研究成果に自信を深めている。

「気候科学を完全に否定する声は、確実に小さくなりました。予測が非常に正確だったことがわかったからです。現時点では、気候科学を否定することはますます難しくなっています」と、『Climatology versus Pseudoscience: Exposing the Failed Predictions of Global Warming Skeptics(気候学vs疑似科学:地球温暖化を疑う人々の誤った予想をあばく)』の著者であるダナ・ヌッチテリ氏は話している。

 1990年の記事は、現代の気候モデル開発の父とされる真鍋氏の言葉を紹介している。「初期のモデルの一部では、たとえば、熱帯の海を海氷が覆うなど、まったくあり得ない予測が生まれたこともありました」。だが、将来の温暖化を初めて具体的に予測した1970年の画期的な論文で、真鍋氏は、1970年から2000年の間に地球の気温は0.57℃上昇するだろう、と述べている。そして、実際に0.54℃の気温上昇が起きた。これは予測に非常に近い値だ。

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