【解説】過去最大級の彗星がやって来る、最接近は2031年

2021年に発見されたバーナーディネリ・バーンスタイン彗星、最新論文を解説

2021.10.06
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 彗星の氷が太陽の光を受けて蒸発すると、ガスが放出されて核の周りにコマができる。今回の彗星は、ガスの量次第では土星の最大の衛星「タイタン」と同じくらいの明るさになる可能性がある。天体望遠鏡を持っていれば、2031年には彗星を観測できるはずだ。

 バーナーディネリ・バーンスタイン彗星はいわゆる「オールトの雲」からやってきた「長周期彗星」である。天文学者の計算によると、この彗星が太陽の周りを1周するには何百万年もかかるという。オールトの雲は、太陽系の外側を取り巻いていると考えられている天体群で、そこからやってきた長周期彗星はまだ3つしか発見されていない。(参考記事:「太陽系外から来たボリゾフ彗星、意外な事実が判明」

 この彗星は、太陽から43億kmという記録的に遠い位置で発見された点でも異例で、これだけ早い時期に発見されたおかげで、今後、多くの天文学者がこの彗星の謎を解明する機会を得ることになる。

接近する巨大彗星
接近する巨大彗星
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極端な軌道の彗星、こうして見つけた

 バーナーディネリ・バーンスタイン彗星の発見に大きく貢献したのは、チリのアタカマ砂漠にあるセロトロロ汎米天文台のブランコ望遠鏡に取り付けられた高感度デジタルカメラだった。

 このカメラは彗星を探していたわけではない。宇宙の膨張を加速させる謎の力であるダークエネルギーの解明をめざす「ダークエネルギー・サーベイ」プロジェクトのために、2013年から2019年にかけて、南天の夜空の広い範囲を8万回も露光してデータを収集していたのだ。カメラが撮影した画像はダークエネルギー研究を一変させたが、未知の天体発見にも役に立ちそうだった。

 バーナーディネリ氏は、ダークエネルギー・サーベイの画像を使って、海王星よりも遠い軌道を公転している未知の太陽系天体を見つけることを博士号研究の目標とした。しかし彼は、そこで難しい問題に直面した。個々の画像が大きすぎて、1枚の画像をフル解像度で表示しようとしたら275台もの高精細度テレビが必要になってしまうのだ。そこで彼は、数万枚の画像の中から数画素の大きさの光の点を探すことにした。

 バーナーディネリ氏は、ダークエネルギー・サーベイの画像を検索して、遠方の星を背景にして移動する点を探し出すコンピューター・プログラムを開発。米フェルミ国立加速器研究所の約200台のコンピューターを使って半年がかりで膨大な量の計算を行い、既知の太陽系天体と軌道が一致しない新天体を817個リストアップした。バーナーディネリ氏とバーンスタイン氏はさらに、このリストを手作業でチェックし、プログラムが正しく機能していることを確認した。

 彼らはそのとき、太陽から何兆kmも離れた場所で生まれたことを意味する極端な軌道をもつ、長周期彗星のような天体に気づいた。「干し草の山の中から1本の針を見つけ出すような難題でした」とバーンスタイン氏は言う。「けれども私たちはこの難題を解決し、うれしい成果を手にしたのです」

次ページ:世界中が彗星に望遠鏡を向けた

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