インドのサーガル島で、浸水した村を歩くサンディヤ・ラナさん。インドやバングラデシュのベンガル湾沿岸に住む多くの人々と同様に、彼女の家族は変化する環境に適応しようと努力してきた。(PHOTOGRAPH BY ARKO DATTO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
インドのサーガル島で、浸水した村を歩くサンディヤ・ラナさん。インドやバングラデシュのベンガル湾沿岸に住む多くの人々と同様に、彼女の家族は変化する環境に適応しようと努力してきた。(PHOTOGRAPH BY ARKO DATTO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 11月、英スコットランドのグラスゴーで、第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開催される。世界各国の外交官や協議担当者らが準備に追われる中、各国政府や業界は、世界経済の脱炭素化に向けた取り組みを本格化させている。だが、対策が直ちに実行されても、地球の気候があっという間に100年前の状態に戻ることはないだろう。

 次のノーマル(常態)がどのようなものであれ、それが人類に都合よく変化することはない。私たち人間が適応していくしかないのだ。

 太古の昔から、動物は“移動”という共通の適応手段を駆使してきた。私たち人類も「闘争・逃走の本能」に基づいて、あるいは紛争や干ばつに直面すれば現実的な対応として、移動を試みる。

 現在、私たちも祖先と同じように移動性の動物になりつつある。これは、緩やかではあるが顕著な変化だ。今後数十年のうちに数十億の人々が、沿岸部から内陸部へ、低地から高地へ、地価や物価が高すぎる土地から手頃な土地へ、破綻した社会から安定した社会へと移住する可能性がある。

 だが、いったいどこへ移住するのだろうか。北半球の場合、ひとことでいえば「南から北へ」だ。

スウェーデンのリゾート地、リクスグレンセンは、北極線の北200キロの地点にある。近年、この小さな町はシリア、アフガニスタン、イラクなどからおよそ600人の難民を受け入れた。(PHOTOGRAPH BY AXEL OBERG, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
スウェーデンのリゾート地、リクスグレンセンは、北極線の北200キロの地点にある。近年、この小さな町はシリア、アフガニスタン、イラクなどからおよそ600人の難民を受け入れた。(PHOTOGRAPH BY AXEL OBERG, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 温室効果ガス排出量の増加や、それによる海洋酸性化や潮流の変化が原因で、気温、雨量、その他の気象条件が予測不可能になりつつある。地域ごとの正確な気候観測によって住みやすさを区分してみると、人類に最適な気候ニッチ(農作や居住に最適な環境ゾーン)が高緯度に移動していることがほぼ明らかだ。

 移住が進む要因は気候だけではない。この気候変動のさなかでも居住に最適な地域の多くでは、高齢化、出生率の低下、人口流出が原因で、人口が減少している。米国、カナダ、英国、アイルランド、スカンディナビア諸国、ロシア、日本など、豊富な水に恵まれ、農業に適した北の”気候オアシス“では、高齢者の介護やインフラ向上のため、若い労働者や納税者が切実に必要とされている。

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 現在のところ、こうした国々のなかで大量の移民を受け入れる政策を継続的に掲げているのはカナダだけだ。カナダは毎年1%の人口増加を目標として、ブラジル人の学生、シリア難民、インド人の医師やソフトウエアプログラマーなど、年間40万人の永住者を受け入れている。カナダの10倍の人口を擁する米国では、毎年約60万人を受け入れている。

 一方、同じく北に位置する広大な国ロシアでは、他の大国よりも人口減少が急速だが、移民の増加には慎重だ。しかし、ここでも水面下では状況が変化している。筆者が訪れたシベリアの市町村では、新しい世代の市長や州当局者が、「気候変動は脅威ではなく、むしろ衰退した地元経済を活性化し、外国から才能ある若者を呼びこむチャンスと考えている」と語ってくれた。

 実際、筆者がカザフスタンで出会ったインド人の調理師、歯科医、建設作業員らは今、極東ロシアで農家や製鉄所の責任者としての就業の機会を手に入れつつある。

次ページ:気候オアシスの誘因力

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