ニューヨーク市の地上高くに作った巣から飛び立つアカオノスリ。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの間に、これらの種が目撃される頻度が増えた。(Photograph by Lincoln Karim, Nat Geo Image Collection)
ニューヨーク市の地上高くに作った巣から飛び立つアカオノスリ。新型コロナウイルス感染症によるロックダウンの間に、これらの種が目撃される頻度が増えた。(Photograph by Lincoln Karim, Nat Geo Image Collection)
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 2020年の春、新型コロナウイルスの流行により世界各地でロックダウン(都市封鎖)が行われると、人流の減った都市に珍しい動物が出現したとする情報がインターネットに飛び交った。中にはフェイクニュースもあったが、人流が減って自然が回復するというのはあながちウソとは言えないようだ。(参考記事:「新型コロナ厳戒下の副作用? 動物フェイクニュースの拡散相次ぐ」

 ロックダウン下の北米で、鳥の移動パターンや生息場所に大きな変化が生じていたとする研究が、9月22日付けの学術誌「Science Advances」に発表された。

 研究によれば、鳥たちは概ねこのロックダウンの恩恵を受け、より多くの時間を市街地で過ごすようになったという。中でも人流の停滞に応じて特に都会に近づくようになったのは、アメリカムシクイやホオジロ(新世界ホオジロ類)の仲間、ミサゴやハクトウワシ、そしてカモ、ガンの一部だ。

 ロックダウン期間は、人間に邪魔されなければ動物たちはどんな行動を取るのかを観察する絶好の機会を研究者らにもたらした。「人間が変えた景観による影響と切り離して、人流による影響を評価するまたとない機会になりました」と、論文の執筆者であるカナダのマニトバ大学の保全生物学教授、ニコラ・コーパー氏は述べている。

 研究結果は、多くの種が交通量のわずかな変化にさえ反応することを示唆している。これは自然保護の上で重要な意味を持つ。

市民科学の活用

 十分なデータを集めるため、米コーネル大学鳥類学研究所とカナダのいくつかの大学の研究者からなるチームは、北米大陸全土にまたがる観察を必要とした。そこで活用したのが、同研究所が運営し、市民科学者の手で作る野鳥データベース、「eBird」のデータだ。eBirdには、バードウォッチャーが目にした鳥を、教育者、科学者、ほかの野鳥観察者などが検索や分析のしやすいフォーマットで記録できるアプリが用意されている。

 このアプリでは、ユーザーが発見した鳥をリストから選択し、スマートフォンのGPS機能を使って時間と場所のデータを入力する(何人かがツイートしていたように「ポケモン図鑑」の鳥版のようなものだ)。ネットで動画を見続けるのに飽きた人びとが窓の外に視線を向け始めたのか、昨年春のロックダウン中ににわかバードウォッチャーが激増し、eBirdで収集された調査データは2020年1月から9月の間に29%も増えた。

 ただし、ムクドリとキツツキの区別がつかないような人の報告が混ざるのを避けるため、研究では過去3年間にもeBirdに春の観察結果を記録している人のデータのみを採用した。

 研究者らはさらに厳しい条件を設けて、ふるいにかけたデータのみを評価対象とした。それでも個々の鳥の観察数で言えば、2017年から2020年にかけて430万件のデータが、今回の研究に採用された。(参考記事:「世界に鳥は何羽いる? 種ごとの推定から求めた初の研究結果」

 次にこの鳥たちの移動と、人の移動との相互参照を行った。人の移動については、人びとの活動が実際にどれだけ減少したかを郡ごとに集計したGoogleの「COVID-19コミュニティ・モビリティ・レポート」のデータを利用した。

次ページ:都会の鳥と田舎の鳥

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