本当にあった「空飛ぶビーバー作戦」、76匹が新天地へ

パラシュートで降り立つ1948年の奇抜な作戦、記録映像も発見

2021.10.14
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【動画】ビーバーのパラシュート降下作戦の記録映像「Fur for the Future」
アイダホ州漁業狩猟局は、ビーバーを移住させるため、パラシュートを使って降下させる作戦を行った。この14分の映像は、同局が1950年代に作成したもの。生きたビーバーを捕まえて移住させる方法について説明している。実際にビーバーがパラシュートで降下する場面は7:20あたりから。(解説は英語です)

 作戦はほぼ支障なく進んだ。ただ、初日の降下のうちの一回で、箱を固定していた紐が切れるという事件が起こった。隙間からビーバーが顔を出し、やがて箱の上に抜け出してきた。しばらくの間、そのビーバーは箱の上でアイダホの気流に乗っていた。

「そのままそこにいれば、何の問題もなかった」とヘター氏は書いている。「しかし、どういうわけか、地上25メートルあたりで箱から飛び降りてしまった」

 このビーバーは生き延びることはできなかったが、作戦で犠牲になったのは1匹だけだった。

 アイダホ州漁業狩猟局は、ビーバーの移住作戦は成功したと考えた。納税者が負担した金額はビーバー1匹あたりわずか7ドルで、ほとんどのパラシュートは回収され、再利用された。数カ月後には、ビーバーたちはダムを完成させ、コロニーもできつつあった。

 現代において、この作戦が繰り返されることはあるのだろうか。局の広報担当であるロジャー・フィリップス氏に尋ねてみたところ、可能性はあるが、おそらくそうはならないだろうという答えが返ってきた。「このような作業にはヘリコプターのほうが適しています。ヘリコプターなら、パラシュートは必要ありません」

 PETAのベル氏によると、今は新しい方法があり、ビーバーがダムを造っても水があふれないようにすることができるという。つまり、昔ほど頻繁にビーバーを移住させる必要はない。(参考記事:「ダム撤去でサケが急回復、鍵は海辺のビーバー」

参考ギャラリー:人間が持ち込んだビーバーの悲劇 写真17点(クリックでギャラリーページへ)
参考ギャラリー:人間が持ち込んだビーバーの悲劇 写真17点(クリックでギャラリーページへ)
フエゴ島にあるアルゼンチンの都市ウシュアイアのそばでダムを作るビーバー。ビーバーのダムは川の道筋を変え、流れる水は淀んだ池となり、その結果、そこで暮らすことができる動物の種類も変えてしまう。(PHOTOGRAPH BY LUJAN AGUSTI, NATIONAL GEOGRAPHIC)

ついに映像が見つかる

 シャロン・クラーク氏の好奇心がなければ、空飛ぶビーバーの話は広く知られることはなかっただろう。ヘター氏の驚くべき作戦から約50年後、クラーク氏はロジャー・ウィリアムズ氏という人物とランチをとっていた。ウィリアムズ氏は、1950年代に漁業狩猟局でビーバーなどをわなで捕まえる仕事をしていた。「いつものようにおしゃべりをしていたら、何気なくこう聞かれたのです。パラシュートで飛ぶビーバーの話を聞いたことがあるかって」

 クラーク氏は冗談だと思って笑った。

「すると、古いニュース記事を見せてくれたのです。私は、『あり得ない!』と言いました。そうしたら、実験の様子を収めた証拠のフィルムもあると言うのです。『Fur for the Future(未来のための毛皮)』という短編ドキュメンタリーです」

 しかし、どこにあるのかを聞いても、ウィリアムズ氏は誰も知らないと答えるだけだった。

 漁業狩猟局に33年間勤めているクラーク氏は、その映像を探そうと心に決めた。「これまで聞いたなかで、いちばん興味をそそられる話でした。何としても見つけたいと思いました」

 ほぼ半年ごとに、州の公文書館に電話して映像が見つかったかを確認し続けた。そして2014年、ついにその電話がかかってきた。

 映像のラベルと分類が間違っていたということだった。さらに、フィルムは古く乾燥しており、取り出すと分解してしまう可能性もあるという。そのため、専門家がデジタル復元した映像を実際に見ることができたのは、それから数カ月後だった。

「公文書館で映像を受け取って見てみました。みんな笑いましたよ」とクラーク氏は話す。「局内で回したらおもしろいだろうと思っていたら、誰かが地元のニュース会社に渡したのです。そして、大きな話題になりました」。動画は2015年10月にYouTubeに投稿され、現時点で60万回以上再生されている。

 1948年のビーバー降下作戦は、実際に空を飛んだビーバーにとっては最悪の瞬間だったかもしれない。しかし、漁業狩猟局が行った独創的で奇抜な作戦として記憶されることになるだろう。

「フィルムを探し出してみなさんと共有するというのは、とても楽しい経験でした」とクラーク氏は話す。「私の仕事には、ほかにも楽しいことがあります。でも、あのテープだけは別格です」(参考記事:「【動画】電線ぶらり、ドア破壊、ヤギの奇妙な行動、空飛ぶヤギも」

文=LUCY SHERRIFF/訳=鈴木和博

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