地球にやさしい空の旅はできる?

ゼロ・エミッションのフライト実現を目指し、クリアすべき課題とは

2021.09.29
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オランダのデルフト工科大学で風洞実験中の「フライングV」。斬新な設計を採用した航空機で、従来型より燃料効率が2割向上すると期待される。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE)
オランダのデルフト工科大学で風洞実験中の「フライングV」。斬新な設計を採用した航空機で、従来型より燃料効率が2割向上すると期待される。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE)
この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年10月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

小型の電動航空機はすでに開発が進んでいるが、ゼロ・エミッションを可能にする大型旅客機の実現は、まだしばらくかかるようだ。

空の上の問題に挑戦する

 旅客機は環境負荷を減らすことができるのか。航空専門家とそんな議論をしているとき、必ず頭に浮かぶ事実と数字がある。事実とは、太陽光パネル、風力タービン、電気エンジン、大容量電池、水素燃料電池、磁気浮上など、地上で炭素削減に貢献する技術はいろいろあるが、空の上では、どれもまだしばらく活用できそうにもないということだ。数百人を乗せて成層圏まで上昇し、何千キロも移動する際には、現時点ではまったく役に立たない。そして数字とは、一度も飛行機に乗ったことがない人のことで、その割合は世界の全人口の8割を超える。

 この事実と数字にはどんな関連性があるのか。航空会社や航空機メーカーが空の旅の脱炭素化に取り組むときに直面する問題のなかで、これは最も重要なポイントとなる。航空機による環境負荷を減らすことは可能だが、地上の輸送手段のように、短期間で一気に変革することはできない。だが航空業界のイメージと収益の確保のためには、対応は待ったなしだ。航空機は気候変動を引き起こす要因として、環境保護論者から目の敵にされている。成果を出すのに時間がかかれば、空の旅をすること自体が倫理にそむくことになるのではないかと、利用者が二の足を踏むことも考えられる。

「絶対にやり遂げなくてはなりません」。そう言うのは、米国に拠点を置くバイオ技術会社ランザテックで最高経営責任者(CEO)を務めるジェニファー・ホルムグレンだ。同社は廃棄物などを原料に、従来のジェット燃料に代わる航空燃料をつくり出そうと、開発を進めている。「このまま化石燃料で飛行機を飛ばすわけにはいかない。その点は誰も異論はありません。ただ解決の決め手がないんです」とホルムグレンは語る。

 確かに、航続距離と時間を制限した分野では、ゼロ・エミッションのバッテリー電源を使った電気エンジンは、すでに実現しつつある。そうした電動航空機をいち早く導入するのは、小型機で短距離輸送を行う航空会社になるだろう。

 けれども、巨大なボーイング747型機を米国ニューヨークから英国ロンドンまで飛ばせるだけのバッテリーはない。交通工学の専門家団体「SAEインターナショナル」で航空宇宙関連の標準規格を担当するデビッド・アレグザンダーの試算では、ジャンボジェット機を浮上させるのに必要な電気は、ノートパソコンのバッテリー440万個分。重さは機体の7倍にもなるため、バッテリーを積んだジャンボジェットは地面から1ミリも浮くことはできないという。最も高性能のバッテリーでも、重さに対するエネルギー量は従来の液体燃料に遠く及ばない。

 航空業界の名誉のために言っておくが、ジェット機が登場してからは、旅客機による環境負荷は年々小さくなっている。最新世代のジェット旅客機は、かつてのものに比べて燃料効率は2倍で、排ガスは数倍きれいになっている。ただこうした改善も、航空輸送量の増大に打ち消されるのが現実だ。平均すると、航空機から排出される炭素が気候変動に関与する量は、減るどころか増えているのだ。

英国ロールス・ロイスの工場で検査中のターボファン・エンジン。現行の最新型エンジンも以前に比べたら格段にクリーンになっているが、同社はさらに開発を進めている。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE)
英国ロールス・ロイスの工場で検査中のターボファン・エンジン。現行の最新型エンジンも以前に比べたら格段にクリーンになっているが、同社はさらに開発を進めている。(PHOTOGRAPH BY DAVIDE MONTELEONE)

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