嵐が熱帯雨林を7mも「散髪」、被害大きく回復しない恐れも、研究

ハリケーン・マリアが直撃したプエルトリコ、定点調査の結果が明らかに

2021.09.27
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プエルトリコのエルユンケ国立公園の木々。4年前にハリケーン・マリアによる壊滅的な被害を受けた後、新たな葉が出はじめたが、回復への道のりは険しい。(PHOTOGRAPH BY ERIKA P. RODRIGUEZ, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
プエルトリコのエルユンケ国立公園の木々。4年前にハリケーン・マリアによる壊滅的な被害を受けた後、新たな葉が出はじめたが、回復への道のりは険しい。(PHOTOGRAPH BY ERIKA P. RODRIGUEZ, THE NEW YORK TIMES/REDUX)
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 2017年9月にプエルトリコを襲ったハリケーン・マリアは、この島の緑豊かな熱帯森林に壊滅的な被害をもたらした。特に大きな被害を受けた場所が、島の北東部のルキージョ山脈にある広さ115平方キロメートルほどのエルユンケ国立公園だ。風速70mの風は林冠を剥ぎ取り、森には葉のない泥だらけの木々が残された。

 ハリケーン・マリアは1928年以来、プエルトリコを襲ったハリケーンの中で最も勢力が強く、4年経った今でも、エルユンケの熱帯雨林にはその爪痕がはっきりと残っている。しかし、生態系は徐々に回復しつつあり、熱帯雨林を管理する米国森林局、NASA、そして米国立科学財団が出資する長期生態学研究(LTER)のエルユンケの科学者たちが、その回復を集中的に研究している。マリアがもたらした被害は、より強力で、より大量の雨を降らせる嵐が、より増える未来への指標となるからだ。(参考記事:「プエルトリコ、「最強」ハリケーンの被災地は今」

 地球温暖化に伴いハリケーンの威力が増すと、エルユンケのような海岸に近い熱帯雨林はどのように変化していくのだろうか? その予測には、ハリケーンの被害を受けても比較的良い状態にあるのはどの樹種か、森林のどの区域の回復が早いのかなどの微妙な生態学的手がかりが役に立つ。研究者の間では、熱帯雨林が気候が変動するなかでハリケーンに適応してゆくと、将来は熱帯雨林ではなくなってしまうのではないかという疑問さえ出てきている。

「ハリケーン・マリアは30年分の被害を一度にもたらしたようなものです」と、米メリーランド州にあるNASAゴダード宇宙飛行センターの地球科学者ダグ・モートン氏は言う。「熱帯雨林で普通に起きているかく乱とは全然違うものでした」

森林が7メートルほど低くなった

 ハリケーン・マリアがエルユンケの熱帯雨林に与えた影響を理解するため、モートン氏は高度300mから森を観察している。2017年3月、氏は島全体を対象とする航空調査に参加し、ライダー(LiDAR)などのレーザーを利用した測距技術を用いて、プエルトリコの生態系の3次元構造とその構成の地図を作成した。当初の目的は、耕作放棄地が森林に戻る過程を長期的に追跡することだった。しかしマリアの直撃後、研究チームは歴史的な暴風雨の影響の測定に焦点を移した。

 マリアの直撃から7カ月後の2018年4月、モートン氏は島に戻り、前年と同じ航空調査を行った。エルユンケが受けたダメージは一目瞭然だった。それまで林冠に覆われて地面など見えなかった熱帯雨林が、狭い森林と光が地面まで届く空き地のパッチワークに変わり、まるでサバンナの森林生態系のようだったとモートン氏は言う。最も印象的だったのは、ハリケーンの影響で森林が低くなったことだった。モートン氏は、林冠は平均7mほど低くなったと推定している。マリアはエルユンケを「散髪」したのだとモートン氏は言う。

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