チンパンジー 希望をつなぐ保護活動

コンゴの保護施設で働くスタッフたちの奮闘を追った

2021.09.29
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コンゴ民主共和国にあるビルンガ国立公園のパイロット、アンソニー・セレが、赤ちゃんチンパンジーのフィリックスとマラを抱きかかえ、ルウィロ霊長類リハビリテーションセンターへと輸送する。この子たちは、家族を密猟者に殺された。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)
コンゴ民主共和国にあるビルンガ国立公園のパイロット、アンソニー・セレが、赤ちゃんチンパンジーのフィリックスとマラを抱きかかえ、ルウィロ霊長類リハビリテーションセンターへと輸送する。この子たちは、家族を密猟者に殺された。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)
この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年10月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

アフリカ中部のチンパンジー保護施設では、親を奪われた幼い動物たちが回復していく姿を見て、諦めないことの大切さを、人間たちが学んでいる。

 野生のチンパンジーの赤ちゃんが、イツァソ・ベレス・デル・ブルゴの腕に抱かれていた。ぐったりして意識はなく、人間の手ほどの大きさしかない。

 小さな体と歯が生えていないことから、その子は生後1カ月ほどだとわかった。低体温症と脱水症状に苦しんでいて、素早く対応していなければ、心臓が止まっていたことだろう。

「それまでに保護したなかで最も幼いチンパンジーでした」と、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)東部にある保護施設、ルウィロ霊長類リハビリテーションセンターで運営責任者を務めるベレス・デル・ブルゴは言う。

 その雌の赤ちゃんを施設に受け入れたのは、2017年6月16日のことだった。ベレス・デル・ブルゴは、バイクとモーターボート、車を乗り継ぐ5日間に及ぶ過酷な救出の旅を手助けし、その赤ちゃんを無事にルウィロの町へ連れてきた。その子は300キロほど離れた熱帯雨林で数人の密猟者と一緒にいるところを、密猟に反対する団体の一員に発見されたのだ。

 赤ちゃんを引き渡した後で密猟者が明かしたところでは、母親のチンパンジーを撃った直後に、この子の双子のもう一方が死んだという。

 保護施設では、直ちに赤ちゃんチンパンジーの命を救うための闘いが始まった。ベレス・デル・ブルゴは、動かなくなった体を温かい毛布で手早くくるみ、点滴を行った。ようやく、赤ちゃんはわずかながら身動きし、目を開けた。

「体温が下がらないように、胸に抱いて眠らせました」と、物静かな若いコンゴ人のザワディ・バランダは言う。彼女はその夜、ブサカラと名づけられた赤ちゃんチンパンジーの世話を任された。ベレス・デル・ブルゴは、母親からお乳をもらったり、愛情を注いでもらったりできないブサカラが、死んでしまうのではないかと案じた。

保護施設の運営責任者イツァソ・ベレス・デル・ブルゴ(左)がマラと遊ぶ。フィリックスを膝に乗せているのは、世話係のミレイユ・ミデルホ・オジバ。親を奪われたチンパンジーは心に傷を負っていることが多いため、世話係が愛情と思いやりをもって接し、回復を支える。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)
保護施設の運営責任者イツァソ・ベレス・デル・ブルゴ(左)がマラと遊ぶ。フィリックスを膝に乗せているのは、世話係のミレイユ・ミデルホ・オジバ。親を奪われたチンパンジーは心に傷を負っていることが多いため、世話係が愛情と思いやりをもって接し、回復を支える。(PHOTOGRAPH BY BRENT STIRTON)

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