2021年8月23日、米国オハイオ州コロンバスで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける男性。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN ZENNER, SOPA IMAGES, LIGHTROCKET VIA GETTY)
2021年8月23日、米国オハイオ州コロンバスで新型コロナウイルスワクチンの接種を受ける男性。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN ZENNER, SOPA IMAGES, LIGHTROCKET VIA GETTY)
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 全米で新型コロナウイルスワクチンの接種ペースが鈍り、感染者が増え続けるなか、連邦政府は多くの労働者にワクチン接種か毎週の検査を義務付けることで、ウイルスの広がりを抑え込もうとしている。

 バイデン大統領は9月9日、ワクチン接種の義務化を伴う新たな感染対策を発表した。従業員100人以上の企業の社員、連邦政府職員および取引業者の従業員、そして連邦政府から資金を提供されている機関で働く医療従事者に適用され、全米で約1億人の労働者が対象となる。

 かなり大規模な措置だが、米国では過去にもワクチンが義務化された前例がある。「ワクチン接種義務は米国的であり、義務化に対する抵抗も米国的です」と米カリフォルニア大学バークレー校の医学史家エレナ・コニス氏は言う。

 ディズニー、ウーバー、フェイスブック、グーグル、ネットフリックス、デルタ航空など、すでに新型コロナワクチンを義務化している企業もあり、多くの人が今回の発表を歓迎した。だが、新たな義務化に対する反発もすさまじい。共和党の複数の州知事が違憲だと批判し、共和党全国委員会は政府の提訴も辞さない構えだ。

 専門家によると、こうした反発をはじめ様々な障害があるため、今回の接種義務化が新型コロナウイルスの感染拡大を抑制し、最終的に流行を終息させるのにどれだけ貢献するかを予測するのは難しいという。

 ワクチン義務化の効果は歴史の裏付けがあるものの、「今回の義務化にどの程度の効果があるかは誰にもわかりません」と米ジョンズ・ホプキンス大学健康安全保障センターの上級研究員で緊急医療の専門家であるエリック・トナー氏は言う。「(それでも)義務化しないよりは、接種を受ける人の数が増えるとは思います」

義務化の例とその効果

 一部の政治家は、今回のワクチン接種義務化を「米国的でない」と批判しているが、米国でのワクチン接種義務の歴史は建国前までさかのぼることができる。米カリフォルニア大学ヘイスティングス法科大学院でワクチン政策を専門とするドリット・ライス教授は次のように語る。

「(米独立戦争[1775〜1783年]で)大陸軍を率いたジョージ・ワシントン総司令官は、兵士に天然痘を予防する『人痘接種』を義務付けました。人痘接種はワクチンの前身であり、より危険な方法です。だからといってジョージ・ワシントンを米国的でなかったとするのは正しいとは思いません」(参考記事:「ワクチンはなぜ重要なのか? その歴史と仕組み」

次ページ:違憲訴訟にも前例が

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