虹色の鋏角(きょうかく)を見せるハエトリグモの一種(Phidippus regius)。(PHOTOGRAPH BY EMANUELE BIGGI, NATURE PICTURE LIBRARY)
虹色の鋏角(きょうかく)を見せるハエトリグモの一種(Phidippus regius)。(PHOTOGRAPH BY EMANUELE BIGGI, NATURE PICTURE LIBRARY)
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 マダニはシカにかみつく際、厚い毛皮を突き破らなければならない。ハキリアリは、頑丈な熱帯植物の葉をいとも簡単に切り裂く。サソリは尾を使って、自分より何倍も大きい獲物に毒を注入する。(参考記事:「自ら毒の体験も、生物毒に魅せられた科学者たち、新薬開発目指し」

 米オレゴン大学の物理学者ロバート・スコフィールド氏は、こうした驚異的な生物たちに魅了されてきた。小さな彼らは、どうやってそのような桁外れの力を発揮しているのだろうか?

 9月1日付けで学術誌「Scientific Reports」に掲載された氏らの論文によると、その答えは、彼らがもつ“武器”や“道具”の原子レベルの構造にあるという。

 一部の無脊椎動物のあご、牙、針には、亜鉛、銅、マンガンなどの重金属が多く含まれていることは知られていた。中には、重金属の割合が素材の20%を占めることもある。しかし、そうした重金属と、彼らの体に含まれている耐久性のあるたんぱく質が、どのように関係しているのかは詳しくはわかっていなかった。(参考記事:「車に踏まれても平気な昆虫ほか、頑丈なよろいをもつ動物5選」

 スコフィールド氏らは、タンパク質と重金属を分子レベルで分析することで、個々の金属原子がたんぱく質に織り込まれ、丈夫で長持ちする複合材料になっていることを発見した。氏らはこれを「重元素バイオマテリアル」と名付けた。

「金属を加えることで、より耐久性のある道具になるというのは、とてもクールですね」。米ホーリークロス大学(マサチューセッツ州)の生物学者ステファニー・クロフツ氏はそう語る。なお、氏は今回の論文には関わっていない。「この研究は、様々な生物でこの特徴が見られることをよく示しています。私たちが思っている以上に一般的なのかもしれません」

 また、重元素バイオマテリアルは、より小型の携帯電話や頑丈な医療機器など、新しい製品を生み出す技術者に着想を与えるのではないかとクロフツ氏は付け加える。(参考記事:「0.00012秒の瞬時に閉じるクモのアゴの謎を解明」

バイオミネラルよりもすごい

 もちろん、動物は別の方法でも丈夫な天然素材を作り出すように進化してきた。動物界に広く見られるやり方は、骨や貝殻などを形成する「バイオミネラリゼーション」(生物が鉱物を作る作用)だ。(参考記事:「ハキリアリは鉱物の「よろい」に覆われていた、昆虫で初」

 骨は無機物(主に炭酸カルシウム)とたんぱく質の強力な複合材料であり、生物の骨格を形作る上で必要な柔軟性や伸縮性もある。ミクロな構造は、大きな無機物をたんぱく質が包み込むようになっていて、無機物やたんぱく質がそれぞれ単独では生み出せない素材だ。(参考記事:「骨の難病と闘った女性、願い叶い博物館の展示に」

 しかし、バイオミネラリゼーションには限界がある。例えば、貝殻は簡単に割れてしまう。「バイオミネラルで鋭利なものを作るのは、レンガでナイフを作るようなものです」と、1980年代後半から無脊椎動物のあごや爪をずっと研究してきたスコフィールド氏は語る。

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