コロナの新たな変異株「ミュー株」、危険度は?

中和抗体への耐性は最高レベルか、WHOが「注目すべき変異株」に分類

2021.09.13
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2021年7月8日、エクアドルのキトに開設されたビセンテナリオ・ワクチン接種センターで、プラスチック製のフェイスシールドを着用してワクチン接種の順番を待つ女性。(PHOTOGRAPH BY FRANKLIN JACOME, AGENCIA PRESS SOUTH VIA GETTY)
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 新型コロナウイルスの新たな変異株の1つであるミュー株は、今年1月にコロンビアで最初に確認された。ウイルス情報のデータベースであるGISAIDによると、9月13日現在、ミュー株は48カ国で確認されているが、米国や日本で猛威を振るっているデルタ株ほどの感染力はないようだ。実際、米国におけるミュー株の割合は6月末にピークに達し、その後は着実に減少している。

 しかしコロンビアではミュー株は瞬く間に主流となり、患者の3分の1を超えた。世界保健機関(WHO)は警戒を要する変異株にギリシャ語のアルファベットの名をつけており、ミュー株は8月30日にその12番目として命名され、同時に「注目すべき変異株」に分類された。

 12の変異株は、危険度の順に「懸念される変異株(VOC)」「注目すべき変異株(VOI)」「さらなる監視のための警告」の3つに分類されている。

 最も危険な「懸念される変異株」に該当するのは、現在世界中で大流行しているデルタ株のほか、アルファ株、ベータ株、ガンマ株の4つだが、ミュー株のような「注目すべき変異株」も心配がないとは言えない。たとえば、東京大学医科学研究所の佐藤佳氏らが査読前の論文を投稿する「bioRxiv」に9月7日付けで発表した研究結果によると、ミュー株のスパイクタンパク質をもつ疑似ウイルスでは、ワクチンによって得られた中和抗体の効果が従来株の7分の1以下だった。

 ベルギーにあるルーベン・カトリック大学の進化生物学者で生物統計学者でもあるトム・ウェンセラーズ氏は、一方でアメリカのようにすでにデルタ株が主流となっている地域では、ミュー株がデルタ株に取って代わる可能性は低いと考えている。

ミュー株について現在わかっていること

 遺伝子解析から、ミュー株のスパイクタンパク質には主な変異が8つあり、その多くが4つの「懸念される変異株」にもあることがわかっている。E484Kという変異はベータ株とガンマ株にもあり、ベータ株とガンマ株ではそのせいでmRNAワクチンによる抗体の有効性が低下し、1回接種に対する耐性が高くなりうることが、医学誌「The Lancet Microbe」に7月1日付けで発表されている。

「懸念される変異株」にはなかった変異もミュー株にはある。たとえばその1つであるR346K変異は、抗体とスパイクタンパク質との相互作用を阻害するため、ウイルスが逃げやすくなるのではないかと推測されていた。

 9月7日付けで「medRxiv」に発表された感染症数理モデルを用いた研究では、ミュー株は従来株と比べて最大で約2倍広がりやすく、2021年5月にコロンビアのボゴタで多数の死者が出た原因になったと推定されている。この研究はまだ査読前だが、従来株に感染したことで獲得された免疫をミュー株は37%回避しうることも示唆されている。

次ページ:実際にどこまで広がり、どんな影響があるのか?

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