新世代の醸造家が奮闘 フランスの食前酒パスティスの復権

仏プロバンス発祥のアニス香る伝統酒とそのブームを支える若い醸造家たち

2021.12.29
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イル・ド・ベンドールの海辺で、遠くにバンドールの街を眺めながら飲むモレスク。モレスクは、パスティスにオルジャと呼ばれる甘いアーモンドシロップを加え、たっぷりの水で薄めたカクテル。(PHOTOGRAPHS BY CLARA TUMA)
イル・ド・ベンドールの海辺で、遠くにバンドールの街を眺めながら飲むモレスク。モレスクは、パスティスにオルジャと呼ばれる甘いアーモンドシロップを加え、たっぷりの水で薄めたカクテル。(PHOTOGRAPHS BY CLARA TUMA)

チョコレートのように滑らか

「なにか違うことをしてみたかったのです。ウイスキーを作ろうと思っていましたが、それには数年かかるため、まずはパスティスを作ろうと始めたら、これがとても順調で、ウイスキーを作る余裕はなくなってしまいました」。こう話すのは、以前は建設業界にいたというストリブレ氏だ。

 ストリブレ氏は、2種類のパスティスを製造している。一つは標準的なブレンドで、もう一つは変わり種と言っていい。「標準的なパスティスよりもハーブや花の香りを強くしています」とストリブレ氏は言う。「定番のアニス、フェンネル、リコリスも入っていますが、そこにバーベナや、お茶やコーヒーに似た飲料のイエルバマテを加えています」

 こうして出来上がったのが、チョコレートのように滑らかで、スペアミントに似たバーベナの優しい香りが漂う極上のパスティスだ。「氷をひとつだけ入れてじっくりと味わうのがおすすめです。パスティスが苦手という人も、これは気に入ってくれますよ」

 最後に、最初から食後酒として作られたパスティスを紹介しよう。生みの親は、マルセイユ近郊オーバーニュにあるシャトー・デ・クリソーの醸造所メゾン・フェロニのギヨーム・フェロニ氏だ。ここではさまざまな蒸留酒が製造されているが、彼の作る最高級パスティスは、2年間熟成させた後、「ビンテージ」として発売される。

 蒸留所にある涼しい石造りのセラーのカウンターで、フェロニ氏が、テイスティング用にストレートで注いだパスティス・ミレジメ2018を手渡してくれる。なめらかなキャラメルの香りがするこの黄金のリキュールは、ほかのパスティスとは一線を画する。甘く、リコリスのきつさはまるでなく、いくつもの植物から生み出される味わいはまろやかだ。フェロニ氏は、乾燥させたものではなく、太陽が降り注ぐシャトーの庭で栽培された新鮮な葉を使っている。

「パスティスとして認められるためには、アニスとリコリスが一定量配合されていなければなりませんが、わたしたちは法律で定められた最低限の量を使い、ほかのフレーバーでその風味をさらに引き出しています」とフェロニ氏は言う。「しかし、アネトール(アニスの成分)が少ないせいで、ほかのパスティスほどは濁りません」

 このように、パスティスはとても多様性を秘めた酒だ。しかし、パスティスを満喫するには、やはり伝統的な作法が不可欠なのではないだろうか。それを確かめるには、マルセイユ旧港にあるバー、ラ・カラベルのバルコニーまで出かけ、アンリ・バルドゥアンを飲んでみよう。そこにはアニシードの風味からパスティスの作法、そして何より重要なプロバンスの太陽まで、必要なものがすべて揃っている。

ギャラリー:アニス香るプロバンス発祥の酒パスティス 写真6点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:アニス香るプロバンス発祥の酒パスティス 写真6点(画像クリックでギャラリーページへ)
エクス・アン・プロバンスのラ・パスティスリーは、あまり知られていない銘柄のパスティスを取り扱っている。(PHOTOGRAPH BY CLARA TUMA)

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文=CAROLYN BOYD/訳=北村京子

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