新世代の醸造家が奮闘 フランスの食前酒パスティスの復権

仏プロバンス発祥のアニス香る伝統酒とそのブームを支える若い醸造家たち

2021.12.29
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ギヨーム・フェロニ氏が手にしているのは、スターアニス(八角)とリコリス(甘草)。どちらのハーブもメゾン・フェロニで作られるパスティスの主要な原料だ。(PHOTOGRAPHS BY CLARA TUMA)
ギヨーム・フェロニ氏が手にしているのは、スターアニス(八角)とリコリス(甘草)。どちらのハーブもメゾン・フェロニで作られるパスティスの主要な原料だ。(PHOTOGRAPHS BY CLARA TUMA)

 パスティスの楽しみ方は、単にプロバンス料理に添えて飲むだけではない。パスティスを使った料理を考案する地元シェフたちもいる。サント・ビクトワール山麓の村ボールクイユにある家族経営のレストラン、ラ・ターブル・ドゥ・ボールクイユのシェフ、ルネ・ベルジュ氏もパスティスを使った料理を考えた(サント・ビクトワール山はセザンヌ、ピカソ、カンディンスキーといった画家たちにインスピレーションを与えたと言われることでも有名)。

 ハワイアンシャツに身を包み、タータンチェックのフレームのサングラスをかけたベルジュ氏は、自分の料理には周囲の環境が反映されていると語る。「わたしは地元の産物を料理と結びつけるのが好きなのです。たとえばラベンダーを魚に、タイムやローズマリーをスフレにといった具合です」

 フェンネルとヒメジにパスティスを効かせたソースを添えた一品を食べながら、ベルジュ氏はパスティスを使った料理のコツを説明する。「パスティスが主役にならないよう、軽めに使います。それから、パスティスでフランベ(酒を料理にかけ、火を付けてアルコール分をとばす調理法)をするのは厳禁です! 派手な演出のためにやるレストランもありますが、あれではせっかくの風味が飛んでしまいますから」。

 パスティスと相性が良い食材は何だろう? 「いちばんは魚ですね。ブイヤベースによく合います。最後にパスティスを加えることで、すべての味が引き立ちます。デザートにも最適で、フローズンスフレに入れたり、アプリコットと一緒に使ったりします」

 近くのエクス・アン・プロバンスにあるパスティス専門店「ラ・パスティスリー」のオーナー、ダビッド・ガブリエリアン氏は、あまり知られていない銘柄のパスティスの紹介に力を入れている。こぢんまりとした店内には、フランス各地から仕入れたパスティスが並び、ガブリエリアン氏も独自のブレンドを作っている。

「市販されている銘柄以外のパスティスを知ってもらいたいのです。ほとんどの人は最初、大手の銘柄しか知らず、パスティスは好きではないと言う人もいます。でも、アンリ・バルドゥアンを試してもらうと、すぐに気に入って、もっとパスティスに興味を持ってくれます。帰りにはたいてい、3、4種類を買って行かれますよ」

 店にはひっきりなしに客が訪れており、多くは30代以下のカップルだ。「パスティスというと、ベレー帽をかぶったおじいさんといったイメージがありますが、最近は女性や若い人も増えてきました」とガブリエリアン氏は話す。

 ラ・パスティスリーの棚には、ディスティラリー・ドゥ・ラ・プレーヌのパスティスも置かれている。ギヨーム・ストリブレ氏が経営する、マルセイユの裏通りにある小さな蒸留所だ。

次ページ:チョコレートのように滑らか

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。
会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

メディカルハーブ事典

72種類の身近で重要なハーブを、美しい写真と図版で解説。最新科学で分析したハーブの作用や臨床研究、安全情報など快適な生活と健康増進に役立つ情報が満載!

定価:5,060円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加