障がい者スポーツの祭典、パラリンピックの歴史

始まりは16人の元軍人によるアーチェリー競技会だった

2021.09.07
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東京2020パラリンピック競技大会の陸上女子400メートルT20(知的障がい)で銅メダルを獲得して喜ぶブラジルのジャルデニア・フェリックス・バルボーザ・ダ・シウバ選手。T20という数字は、障がいのクラス分けを表している。(PHOTOGRAPH BY KIYOSHI OTA, GETTY IMAGES)
東京2020パラリンピック競技大会の陸上女子400メートルT20(知的障がい)で銅メダルを獲得して喜ぶブラジルのジャルデニア・フェリックス・バルボーザ・ダ・シウバ選手。T20という数字は、障がいのクラス分けを表している。(PHOTOGRAPH BY KIYOSHI OTA, GETTY IMAGES)
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 米国の29歳の競泳選手であるジェシカ・ロングさんは、先天性の障がいにより、幼いころに両脚のひざから下を切断した。ロング選手は、東京2020パラリンピック競技大会で6つのメダルを獲得し、これまでのパラリンピックでの総メダル獲得数を29個とした。ロング選手にとって、パラリンピックは最高のレベルで競い合う機会であるだけでなく、4年に一度の楽しみであり続けている。

「アテネ大会で初めて金メダルをとった12歳のときから、パラリンピックがどういうものかを人々に知ってもらいたいと思ってきました。年を経るごとに、パラリンピックはどんどん盛り上がるようになり、大きく発展しています。今回の東京は、これまで参加したなかでも特に好きな大会です」と、ロング選手は話す。

東京2020パラリンピック競技大会で、競泳女子400mメドレーリレー 34ポイント(運動機能)決勝で泳ぐ米国チームのジェシカ・ロング選手。彼女は、このレースで金メダルを獲得した。(PHOTOGRAPH BY NAOMI BAKER, GETTY IMAGES)
東京2020パラリンピック競技大会で、競泳女子400mメドレーリレー 34ポイント(運動機能)決勝で泳ぐ米国チームのジェシカ・ロング選手。彼女は、このレースで金メダルを獲得した。(PHOTOGRAPH BY NAOMI BAKER, GETTY IMAGES)
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 今回、パラリンピックの参加者数は過去最高となった。オリンピック閉幕後の8月24日から始まった東京大会には、161の国と地域および難民選手団から、4400人以上のアスリートが参加した。1つの大会への参加人数としては、これまでで最大だ。(参考記事:「幻の「人民オリンピック」とは何か、開会式前夜に起きた戦闘」

 パラリンピックの歴史は、オリンピックに比べれば新しい。しかし、開始当初と比べれば、大会は劇的な進化を遂げている。国際パラリンピック委員会(IPC)は、4年に一度の大会のたびに、障がいの種類、参加国、競技種目を拡大し、アスリートの数を増やし続けている。

始まりは16人のアーチェリー競技会

 パラリンピックの前身となる大会が初めて行われたのは、1948年のことだ。ただし、身体的な障がいを持つアスリート向けのスポーツは、少なくともその60年前から存在していた。ドイツのベルリンで耳の不自由なアスリートたちが自分たちのスポーツクラブを作ったのは、1888年のことだった。(参考記事:「体操はいかにしてオリンピックの人気競技となったか」

 しかし、障がいのあるアスリートたちによる競技会という考え方は、第二次世界大戦まで広まることはなかった。戦争で負傷した兵士や民間人を支援するため、英国で脊髄損傷センターの運営にあたっていた医師、ルートヴィヒ・グットマン氏が率先して行った運動がきっかけだった。グットマン氏は、競技会への参加が精神的、身体的なリハビリになると考えた。さらに、障がい者が社会的に顧みられていないことを憂慮し、スポーツを「まひ患者の社会復帰」の一環と見なした。

「障がい者のスポーツは、社会的な視点に大きな影響を与えることがわかりました」。グットマン氏は、IPCのWebサイトに掲載されているインタビューでそう述べている。「まひ患者がスポーツを受け入れている様子を目にしたとき、この活動を始めることが必要だと思ったのです」

次ページ:進化するパラリンピック

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