シロエリハチドリのメスは、通常の茶色ではなく、オスのような派手な色の羽をもつことがある。新たな研究によって、それによるメリットが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
シロエリハチドリのメスは、通常の茶色ではなく、オスのような派手な色の羽をもつことがある。新たな研究によって、それによるメリットが明らかになった。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
[画像をタップでギャラリー表示]

 オスの鳥には、派手な羽をもつものが多い。理由はメスを引き付けるためだ。

 クジャクでは、青や緑の羽を広げるのはメスではなくオスだし、ショウジョウコウカンチョウもオスは鮮やかな赤い羽をもつが、メスは薄茶色だ。(参考記事:「動物大図鑑 ショウジョウコウカンチョウ」

 熱帯の小さなハチドリの一種、シロエリハチドリ(Florisuga mellivora)も、オスは頭が濃い青色で背中が鮮やかな緑色だが、メスは地味な色をしているのが一般的だ。

 ところが、パナマでシロエリハチドリを調査している研究者グループが、2015〜2019年に120羽以上のメスを捕獲調査したところ、3割近くがオスのような外見をしていた。

 8月26日付けで学術誌「Current Biology」に発表された論文は、その理由を明らかにしている。なんとメスのシロエリハチドリは、オスの色をまねることで、食事中に他のハチドリから嫌がらせを受けないようにしているという。

「鳥の明るい色は、攻撃性と結びついています」。論文の筆頭著者であり、米ワシントン大学で進化生態学を研究しているジェイ・フォーク氏はそう述べる。「オスのように見えるというだけで、いじめを思いとどまらせることができる」ので、花蜜にありつきやすくなるのだという。

 これまで、鳥のメスにおける装飾の役割が定量的に分析されることはほとんどなかった。今回の研究はそうした点に光を当て、異性を引き付けるためでなく社会的な機能のために進化の力が働く場合があることを示していると、米インディアナ大学の進化生物学者サラ・リプシュッツ氏は言う。氏は今回の研究に関与していない。

男装の理由とは

 オスが進化の中で身につけた派手な色、大げさな角や尾、肉垂などの目をひく特徴については、長らく研究が行われてきた。一方、一部のメスもこうした装飾をもつものの、その役割は20年ほど前までほとんど見過ごされてきた。ダーウィンが支持した当初の考え方では、メスのこうした特徴は実質的な役割を果たさないものの、遺伝子の大部分がオスと共通しているため、オスから受け継がれただけだとされてきた。

「この古い考え方では、メス独自の作用が完全に無視されていました」とリプシュッツ氏は言う。しかしその後、鳥や魚などで、装飾をもつメスが繁殖相手や資源を獲得するためにその外見を役立てていることを示唆する研究が積み重なってきた。

 ハチドリについて言えば、2月24日付けで学術誌「Proceedings of the Royal Society B」に発表された研究で、博物館のハチドリ209種のうち47種でオスに似た外見をもつメスがいることがわかった。メスがオスに似た外見をもつ頻度は、これまで認識されていたよりも高い可能性があることを示唆している。(参考記事:「想像もつかない、ハチドリに見える自然の色の世界 最新研究」

 シロエリハチドリもこの47種に含まれていた。では、男装のメスは、地味なメスたちの中で際立つことで、繁殖相手を引き寄せようとしているのだろうか。それとも、花蜜をめぐる争いのためだろうか。この点を突き止めようとしたフォーク氏らは、パナマのガンボアという小さな町で、男装のメスがどのくらいいるのかを調べることにした。

次ページ:オスにモテるのは地味なメスだが…

ここから先は「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」の会員の方(登録は無料のみ、ご利用いただけます。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 鳥の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

色も姿も多様な鳥たちの写真約350枚、280種以上を収録。世界各地の珍しい鳥、美しい鳥、変わった鳥など、まだまだ知られていない鳥を紹介します。

価格:2,860円(税込)