学校でのマスク義務化めぐり対立が激化、新学期迎え、米国

デルタ株で子どもの新規感染者が急増、個人の自由か公共の利益か

2021.09.01
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 学校でのマスク着用義務をめぐる対立には党派的な色合いが濃い。共和党の知事や議会は、公衆衛生当局による新型コロナウイルス対策の実施を制限する方向に動いている。一方、学校でのマスクの着用を義務付けている14の州の知事はすべて民主党だ。また、マスクの着用義務を最も支持している保護者は黒人(83%)とヒスパニック系(76%)であり、新型コロナウイルスの感染・入院・死亡リスクが最も高い人々でもある。

 バイデン政権は各州の教育政策に対してほとんど影響力を持たないが、ミゲル・カルドナ教育長官は8月中旬にフロリダ州のデサンティス知事とテキサス州のアボット知事に書簡を送り、マスク着用の義務化を拒んだことを非難した。

医師の襲撃事件も発生

 テキサス州は、親が自分の子どもにマスクを着用させるかどうかを選択する権利は、ほかの親が自分の子どもの健康について抱く懸念よりも重要であると主張している。

 アボット知事の広報担当のナン・トルソン氏はナショナル ジオグラフィックのメールでの取材に対し、「アボット知事は、『マスクの着用を義務付ける時期は終わった。今は各人が自己責任のもとで行動する時期だ』と明言しています」とコメントした。

「テキサス州民は、自分自身や大切な人を新型コロナウイルスから守るための安全な方法を学び、身につけているので、連邦政府に教えてもらう必要はありません。親には、自分の子の人生に関する様々な決定と同様に、マスクを着用させるかどうかを決める権利があります」

 この主張の問題点は、たとえ室内にいるほかの人々がマスクをしていなくても、マスクを着用していればその人自身は自らの感染を適切に防げるという仮定にある。症状がなければマスクをする必要はないと言う人は、感染者が発症する前からウイルスを排出しはじめ、他人に感染させる可能性がある点を考慮していない、とフローレス氏は批判する。

 それでも、公立学校の生徒を含むすべての人に、マスクを着用しない自由があるという主張は、学校でのマスク着用義務化に反対する少数派の親たちを煽り、テネシー州教育委員会の会議で発言した医師が襲撃されるという事件さえ発生した。

 広報担当のトルソン氏はアボット知事の取り組みについて、すべての人々を守るためにワクチン接種を受けるように州民に働きかけていると説明する。さらにそれぞれの学区では、少人数でのグループ学習や、「校舎、教職員、生徒の衛生管理の強化」など、前年度の安全対策の多くが継続されるという。また、免疫力が低下している子どもにはバーチャル学習という選択肢があるというが、希望するすべての児童がそうした方法で学べるわけではない。

 ある母親は言う。「私の娘はまれな遺伝病をもっていて、新型コロナに感染すれば死に至るおそれがあります。アボット知事は、娘のような基礎疾患のある子どもたちの死亡証明書に署名しているのです。彼は、何千人もの子どもとその家族の命を守ることができる、シンプルな布を拒絶しているのです」

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文=Tara Haelle/訳=三枝小夜子

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