学校でのマスク義務化めぐり対立が激化、新学期迎え、米国

デルタ株で子どもの新規感染者が急増、個人の自由か公共の利益か

2021.09.01
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2021年8月10日、米国フロリダ州のブロワード郡教育委員会の外で行われた抗議活動で、マスクの着用を訴える女性(左)に、マスクは不要だと説得を試みるマスク反対派の女性(右)。(PHOTOGRAPH BY AMY BETH BENNETT, SOUTH FLORIDA SUN-SENTINEL VIA AP)
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 新型コロナウイルスに感染して入院する子どもの数が過去最高を記録する中、米国のいくつかの州で学校でのマスク着用義務をめぐり激しい攻防が繰り広げられている。

 米テキサス州に住む8歳のボビー・キャンベル君は、今年こそは学校で対面授業を受けたいと願っていた。しかし彼の願いは叶わないかもしれない。

「ボビーは去年、学校の科学の課題でマスクの効果について調べたので、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するには、マスクの着用が重要であることをよく知っているのです」。ボビーの母親で、テキサス州プラノで医師をしているカルメン・キャンベルさんは言う。「なので彼は今、なぜ学校はマスクの着用を徹底させようとしないのかと疑問に思っています」

 テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は5月に行政命令を出し、学校を含むすべての公共の場におけるマスクの着用義務を禁止したが、州内の一部の学区はその命令に背いてマスクの着用を義務づけている。モデルナ社のワクチンの治験にも参加しているボビー君は、友人たちとともに、自分たちの学区でもマスクの着用を義務付けるよう、教育委員会に訴える動画を制作した。

 テキサス州のほか、フロリダ州、オクラホマ州、アリゾナ州、サウスカロライナ州など、共和党の知事がいる各州でも状況は同じだ。8月に入ってから連日のように、マスク着用義務に関連した請願、抗議、提訴、教育委員会の会議、裁判所の命令などがあり、衝突は激化している。

 法律や政治に関する多くの議論と同様、マスク着用義務をめぐる問題の核心は、個人の自由と公共の利益の対立にある。つまり、子どもにマスクなしで登校させることを望む保護者の権利は、死に至る可能性のある感染症から人々を守るために全員がマスクを着用することを望む生徒、教職員、家族の権利に優先するかどうかだ。

 米カイザー・ファミリー財団(KFF)が11日に発表した調査結果によると、ワクチンを接種していない児童に、学校でのマスク着用を義務付けることを支持する保護者の割合は63%だが、この割合は支持政党によって明らかな差がある。マスク着用義務化を支持する保護者は、民主党支持者では88%、無党派層でも66%だが、共和党支持者ではわずか31%だった。

 マスク着用義務化に反対する保護者の主張としては、マスクをしていれば感染しないと言える十分なデータがない、というもの以外にも、マスク着用によるニキビや、身体的な不快感、眼鏡が曇るなどのほか、相手の顔の下半分が見えないせいで心理的な問題が生じるおそれもあり、子どもにとって有害だというものもある。

状況を大きく変えたデルタ株

 今、子どもたちの感染が増えているのは、デルタ株の感染力が強い上、子どもたちはワクチン接種を受けていないからだ、と米テキサス大学健康科学センターマクガバン医科大学院の小児感染症チーフで、チルドレンズ・メモリアル・ハーマン病院の内科医でもあるアンソニー・フローレス氏は言う。

「生後数カ月の赤ちゃんからティーンエイジャーまで、過去に見たことがないほど多くの子どもたちが重い呼吸器疾患にかかっています」とフローレス氏は言う。一方で、デルタ株が従来のウイルスよりも子どもにとって危険になっているのか、それとも全体の患者数が多いために重症化する子どもの人数が増えているのかは、まだわからないという。

次ページ:子どもの感染者が全体の2割以上に

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