土星の中心にスープ状の巨大なコア、最新研究で解明

「予想していたものとまったく違っていました」と研究者、波打つリングから読み解く

2021.08.20
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 1990年代初頭、惑星科学者のマーク・マーリー氏は、土星内部の物質の動きによって、土星に近いところにある暗くて幅の広いC環に波紋が生じ、それを観測できるのではないかと考えた。土星の心臓が鼓動し、内臓が動き、全体が脈動する。その振動が環の粒子と相互作用し、C環に「スパイラル密度波」と呼ばれる波紋を形成するのだ。

 マーリー氏のアイデアは「100%正しいことがわかりました」とマンコビック氏は言う。しかし、彼の予想を裏付けるためには、20年以上の歳月と数十億ドル(数千億円)規模の宇宙探査が必要だった。

 2013年、NASAの土星探査機カッシーニのデータを調べていた科学者たちは、環の中に初めて地震の痕跡を見つけ、それを利用して土星の内部をのぞいてみた。研究チームは、この新しい研究分野を「土星地震学(kronoseismology)」と呼び、観測された波紋のほとんどを土星内部の動きと関連付けた。2019年には、この手法を用いて、土星が10時間33分で1回転していることも突き止めた。

参考ギャラリー:天の川銀河のブラックホール、波打つ土星の環、ほか2019年6月の宇宙画像12点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:天の川銀河のブラックホール、波打つ土星の環、ほか2019年6月の宇宙画像12点(画像クリックでギャラリーへ)
天の川銀河の中心にあるブラックホールの美しい磁場や、火星表面で見つかったできたてのクレーター、探査機カッシーニから届いた波打つ土星の環。国際宇宙ステーションのクルーは千島列島上空から火山の噴火を目撃し、大規模な山火事と戦う消防士は、宇宙からも確認できる痕跡を残した。(Composite Image by NASA)

 現在は米アリゾナ大学に在籍し、今回の論文の査読を担当したマーリー氏は、「長い歳月を経て、土星の環の波が実在することがついに確認されました。私たちが予想したような波が20個以上見つかりました」と言い、「せっかちな人にはお勧めできない研究分野です」と笑う。

 しかし、マーリー氏が予測しなかった不思議な波が少なくとも1つあり、マンコビック氏と同じくカリフォルニア工科大学のジム・フラー氏は、この波を利用して土星の内部を探った。

「彼らは、土星のコアが徐々に変化してゆく不明瞭なものである場合にのみ、この特殊な波と、それ以外のすべての波を説明できることを、非常に説得力のある形で示しました」とマーリー氏は言う。「この波は惑星深部の状態に非常に敏感なのです」

土星の巨大なコア

 マンコビック氏とフラー氏は、土星の環の波紋を利用して、土星の中でコアが大きな部分を占めていることを明らかにした。土星のコアは岩石と鉄の塊だろうと予想されていたが、今回の分析により、水素とヘリウムと氷と岩石が混ざった、輪郭の不明瞭なスープのようなものであることがわかった。土星を真っ二つに割っても、玉ねぎや飴玉や地球のようなはっきりした層状構造は見られない。コアの境界は曖昧で、中心に近づくほど物質の濃度が高くなっていく。

 マンコビック氏は、自分たちが導き出した土星の描像があまりにも奇妙だったため、環の波紋を別の方法で説明しようと試みたこともあったという。「この描像を否定するため、できるかぎりのことをしました」と彼は言う。

 しかし、彼らが導き出した土星のコアのモデルは、科学者たちが土星から収集した大量の重力データときれいに一致していた。また、木星のコアが同様の低密度の混合物である可能性を示したNASAの木星探査機ジュノーの観測結果にもよく似ていた。

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