2001年初頭、タリバン勢力はアフガニスタン国立博物館で偶像とみなした収蔵品を破壊した。写真で学芸員が持っている仏像の頭もその一つ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT NICKELSBERG)
2001年初頭、タリバン勢力はアフガニスタン国立博物館で偶像とみなした収蔵品を破壊した。写真で学芸員が持っている仏像の頭もその一つ。(PHOTOGRAPH BY ROBERT NICKELSBERG)
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雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2021年9月号(8月30日発売)で、タリバンが勢力を拡大するアフガニスタンを取材した特集「暗雲のアフガニスタン」を掲載します。

 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンが首都カブールに進攻し、大統領府を掌握した。不意を突かれた同国の博物館学芸員や考古学者は、遺跡や遺物を守るために奔走している。タリバンの支配地域にある文化財の運命はまだ不透明だ。

「これほど早く展開するとは思っていませんでした」と、カブールにあるアフガニスタン考古学研究所を率いるヌール・アガ・ヌーリ氏は語る。当局はヘラートやカンダハルなどから遺物を輸送して保管するつもりだったが、アフガニスタン政府の突然の崩壊により、それもできなくなった。(参考記事:「アフガニスタン 輝ける至宝」

 タリバンがカブールを掌握した今、アフガニスタン国立博物館にある8万点以上の収蔵品が危険にさらされている。「スタッフと収蔵品の安全を大変心配しています」とモハメド・ファヒム・ラヒミ館長は語る。(参考記事:「紛争中、博物館員が命がけで守り抜いたアフガンの秘宝」

2001年にはバーミヤン大仏を爆破

 何千年にもわたり交通や文化の要衝として栄えてきたことから、アフガニスタンには他では見られない遺産が豊富に残されている。7世紀にイスラム教が到来する前後まで、仏教のほかゾロアスター教、キリスト教、ユダヤ教、ヒンドゥー教がここで花開いた。

 インドとイラン、中国を結ぶシルクロードの大動脈だったアフガニスタンには、古代の都市や修道院、旅人が泊まった隊商宿の遺跡が点在している。旅人たちの中には、フビライ・ハンの華やかな宮廷へ向かうマルコ・ポーロもいたはずだ。

 タリバンはしかし、偶像を一切否定し、イスラム以前の過去を軽蔑する原理主義的なイスラム教を信奉している。2001年にはバーミヤンの大仏を爆破したほか、カブールの国立博物館に収蔵されていた多くの遺物や像を破壊した。タリバンが再び同じような暴挙に出るかどうか、文化遺産関係者の間で様々な意見が飛び交っている。(参考記事:「爆破から20年、バーミヤン大仏を撮っていた写真家の危険な潜入 写真9点」

 タリバンの指導者らは2月の声明で、支持者に文化財を「しっかりと保護、監視、保存」し、違法な発掘を止め、「すべての史跡」を保護するよう指示した。また、遺物の美術品市場での販売を禁止するとした点も見過ごせない。

参考ギャラリー:もう見られないバーミヤン大仏、破壊前の貴重な写真9点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:もう見られないバーミヤン大仏、破壊前の貴重な写真9点(画像クリックでギャラリーへ)
アフガニスタンのバーミヤン渓谷にあった古代の巨大石仏2体は、2001年3月にイスラム原理主義勢力タリバンによって爆破された。タリバンが政権を掌握する間際に撮影された大仏の貴重な姿を紹介する。(写真=PASCAL MAITRE)

 だが、アフガニスタンの文化遺産専門家の多くは懐疑的だ。「タリバンはうわべを取り繕いましたが、今も非常にイデオロギー的で過激なグループであることに変わりはありません」。アフガニスタン・アメリカン大学で社会科学を教えるオマール・シャリフィ氏はそう語る。

次ページ:専門家にはタリバンから脅迫や非難も

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