可憐な白い花を咲かせるイワショウブの仲間Triantha occidentalis。茎には、虫を捕らえる粘着質の毛が生えている。(PHOTOGRAPH BY BOB SWEATT)
可憐な白い花を咲かせるイワショウブの仲間Triantha occidentalis。茎には、虫を捕らえる粘着質の毛が生えている。(PHOTOGRAPH BY BOB SWEATT)
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 真夏に北米西海岸の山の中を歩いていると、沼地でよく見かける花がある。濃い緑色の花茎に控えめな白い花を咲かせるイワショウブの仲間、Triantha occidentalis(チシマゼキショウ科イワショウブ属)だ。

 最新の研究で、この植物の知られざる秘密が明らかになった。食虫植物だったのだ。(参考記事:「【動画】食虫植物は両生類も食べる、「釜ゆで」か」

 きっかけは、研究者のチェンシ・リン氏がカナダ、ブリティッシュ・コロンビア大学の学生だったころに、別の学生から聞いた話だった。Triantha occidentalisの茎には、モウセンゴケが虫を捕まえるのに使うわなに似た、粘着構造があるという。

 Triantha occidentalisは食虫植物なのか。リン氏が詳しく調べたところ、100年以上前から知られているTriantha occidentalisは、実際に小さな昆虫を捕らえて栄養分を吸収していることが判明、8月17日付けの学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に研究成果が発表された。論文によると、Triantha occidentalisの葉に含まれる窒素の3分の2は、捕らえられた昆虫に由来するという。窒素は、植物にとって必須の栄養素だ。(参考記事:「食虫植物が近くの植物から虫を盗むと判明、九大」

「このタイプの植物は、動物との立場を逆転させているのがクールですね」と、現在はカナダ、トロント大学の博士研究員であるリン氏は語る。

 現在、世界には約800種の食虫植物が知られている。これら食虫の形質は、11のグループで別々に進化したことがこれまでの研究でわかっている。今回見つかった食虫植物はこれまで食虫性が知られていなかった新たな系統だ。つまり、少なくとも12回、食虫性が独立して進化したことを示しているとリン氏は言う。

珍しい食虫植物

 Triantha occidentalisは、150を超える種を含むモウセンゴケ科モウセンゴケ属と似ているところがある。モウセンゴケは、粘着性のある色鮮やかな毛で昆虫を捕らえ、酵素を分泌し、虫の栄養分を吸収する。(参考記事:「食虫植物 魔性のわな」

 一方、Triantha occidentalisが属するのは、これまでに食虫植物が確認されていない、小さな多年草であるチシマゼキショウ科だ。また、Triantha occidentalisの生育期間は非常に短く、5月の雪解け後に芽を出し、6〜7月に花を咲かせ、種を作り、秋口には枯れてしまう。

 沼地に咲くTriantha occidentalisと同じく、食虫植物の多くは、日当たりがよく、栄養の少ない土壌に生息している。こうした場所で昆虫を消化する能力があることは、生存に有利に働く。しかし、動物を捕らえて食すことのできる構造を作るには、多くのエネルギーを必要とするため、この能力を持つ植物は被子植物の0.2%しかないと考えられている。

 Triantha occidentalisの肉食性が見過ごされてきた理由の1つは、毛が非常に小さく、またその毛が花茎にしか生えていないという、既知の食虫植物にはない特徴があるからだとリン氏は語る。

次ページ:知られざる食虫植物

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