スリナム共和国のシパリウィニ地方に生息するコバルトヤドクガエル。(PHOTOGRAPH BY JON G. FULLER/VWPICS / ALAMY STOCK PHOTO)
スリナム共和国のシパリウィニ地方に生息するコバルトヤドクガエル。(PHOTOGRAPH BY JON G. FULLER/VWPICS / ALAMY STOCK PHOTO)
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 ニューギニア島の森に、猛毒を持つズグロモリモズという小鳥が暮らしている。オレンジと黒のその羽に触れただけで、手に火がついたような感覚になる。猛毒で知られるヤドクガエルにもあるバトラコトキシン(BTX)と呼ばれる毒で、少しでも摂取するとまひや死に至ることもある。神経や脳、筋肉の細胞にある「ナトリウムチャンネル」の機能が停止するからだ。

 何十年もの間、ズグロモリモズやヤドクガエルが自分の毒で死なないのは、BTXに耐えられるナトリウムチャンネルを進化によって獲得したというのが有力な説だった。コブラの毒に耐えるエジプトマングースなど、この方法で毒を寄せつけない動物の実例もある。しかし、この説を覆す論文が8月5日付けで「Journal of General Physiology」に発表された。

 論文は、ズグロモリモズやヤドクガエルが「毒素スポンジ」を持つ可能性を示している。毒素スポンジとは、ダメージをもたらす前に、致死性の毒をスポンジのように吸い取るタンパク質だ。

イオンチャンネル自体に耐性はなかった

「この毒は天然の薬物のようなものと考えればよいでしょう。動物が身を守るために使う薬物です……自分を食べようとした相手にとても不快な思いをさせ、最悪の場合、命を奪うこともできます」。こう語るのは論文の著者の1人で、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校心臓血管研究所の生物物理学者ダニエル・マイナー氏だ。(参考記事:「毒をもつ動物たち、3つの「化学兵器」戦略」

 ズグロモリモズやヤドクガエルが自分で毒を生成することはなく、獲物の甲虫から毒を得ていると科学者たちは考えている。

 すると、1つの疑問にたどり着く。ズグロモリモズのような毒を持つ動物は、どのように自分自身を毒から守るのだろう?

 そこで、マイナー氏の研究チームは実験環境で、ズグロモリモズやヤドクガエルのナトリウムチャンネルの遺伝子を再現し、さまざまな種の生きた細胞に挿入してからBTXにさらしてみた。

 その結果、これらの細胞はBTXに勝つことができなかった。つまり、ズグロモリモズやヤドクガエルのナトリウムチャンネル自体はBTXへの耐性を持たない。

 しかし、さまざまな種の生きたカエルにBTXを注入すると、毒を持つカエルだけが生き延びた。

次ページ:毒から守る何かが体内にある

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